ウクライナの衛星通信網構想、民間企業が実験機打ち上げ
ウクライナの防衛技術企業Himeraとデンマークの衛星メーカーGomSpaceは10月27日、自社開発した実験用通信衛星「Obria Nano」の軌道上での運用を開始したと発表した。この衛星は10月1日にSpaceXの相乗り打ち上げミッション「Transporter-18」で打ち上げられ、現在テスト段階にある。
ウクライナはロシアの2022年の侵攻以来、SpaceXの衛星通信サービスに大きく依存してきた。戦場の指揮通信、ドローン運用、インフラが破壊・寸断された地域での通信に不可欠な存在だったが、10月中旬に実施された接続制限によってドローン運用が妨害され、ロシアの攻撃ドローン迎撃作戦に支障が生じた。10月24日には通信速度が正常に復帰したと発表されたものの、この混乱がきっかけとなり、ウクライナ独自の衛星通信網構築の動きが加速している。
戦略的自立を目指すウクライナの取り組み
Himeraのミシャ・ルドミンスキー最高経営責任者は、プロジェクトの意義について「単なる衛星打ち上げではなく、ウクライナにとって独立した通信ネットワークの基盤を築く機会」と強調した。同社は2022年に設立され、電磁戦環境での運用を想定した軍用の安全通信システムを開発している。GomSpaceはデンマーク・オールボーに本社を置き、小型衛星や通信ペイロード、宇宙機の部品供給を手がけている。
両社は将来的にウクライナ国内で衛星とグラウンドターミナル(地上局)の製造を目指す計画だ。段階的には軌道でのテストを通じて衛星群(コンステレーション)の設計に反映させていく予定である。
欧州主導の通信独立化、複数の取り組みが並行
ウクライナの通信自立の試みはHimeraとGomSpaceだけではない。フィンランドの衛星メーカーIceyeと通信機器メーカーのNokiaは、ウクライナ国防省と独立系のブロードバンド衛星通信ネットワーク開発の意向書に調印した。これらのヨーロッパ発の構想は、いずれもSpaceXへの過度な依存の低減を目指している。
ただし、Himeraとその他の構想も、SpaceXの全球規模ネットワークに置き換わるものではないとされる。限定的な軍事作戦向けの国家規模コンステレーションは、商用サービスの補完的役割を担うと見込まれている。
出典: SpaceNews
