光学通信で衛星データの大量輸送を実現 オーストラリア企業LC60がTranscelestialと契約
LatConnect 60(LC60)がTranscelestialと光学通信システムの商用契約を結んだ。短波赤外線衛星「SWIRSAT」ミッションに搭載する光学通信ターミナルと、Transcelestialが運用する地上局ネットワークへのアクセスを確保する内容だ。契約は2026年8月20日に発表された。
LC60は赤外線衛星画像の高解像度取得と処理・配信を一貫して手がけるオーストラリアの企業。防衛、農業、カーボン管理、資源開発の分野で衛星情報の活用を進めている。Transcelestialはレーザー通信ハードウェアと地上局ネットワークを構築する企業で、衛星から地上への通信、衛星間通信、地上の点対点通信に対応している。
従来の電波下行リンクの限界を光学通信で解決
今回の契約で導入される光学ターミナルは最大10Gbpsの通信速度に対応する。地上局ネットワークは現在2ヶ所で稼働しており、2026年末までに5~6ヶ所の追加が予定されている。データ輸送と地上局運用はサービスとして提供される。
従来の衛星データ下行は電波を用いるX帯リンクが主流だ。一般的な小型衛星のX帯通信では、7分間のパス(衛星が地上局の上空を通過する時間帯)で約5ギガバイト程度しか送信できない。圧縮による電力消費と画像品質の低下が課題となる。これに対しTranscelestialの1Gbps光学サービスでは同じパスで約50ギガバイト、10Gbpsサービスなら約500ギガバイトの転送が可能になる。
LC60のベンタット・ピレイ最高経営責任者は「地球観測衛星は収集するデータ量が地上に送信できる容量を大きく上回っている。RF下行リンクはスペクトラム規制が厳しく、ライセンスコストが高い。われわれが取得するのは高容量の光学パスと、それを終端させる地上ネットワークをサービスとして利用する権利。自社でスペクトラムライセンスを取得したり光学地上局を構築する必要がない」と述べた。
セキュリティと運用性で光学通信の優位性を確保
光学通信は電波通信と比べ盗聴耐性が高い。ビームが狭く指向性が強いため、傍受には物理的に光路上に存在する必要があり、広帯域RF妨害の脅威も受けない。Transcelestialは2026年3月から耐量子暗号化技術を実運用開始しており、量子耐性を備えた暗号化層がさらなるセキュリティを提供する。
複数地点の地上局配置は可用性向上にも貢献する。天候が悪化した時は別の局へ下行リンクを切り替えることができ、次のパスを待つ時間を短縮できる。パス内では適応的データレート制御と前方誤り訂正により、衛星の軌道幾何が改善するにつれてスループットが向上し、一定速度への低下を避けられる。
LC60の衛星群が18機に拡大する際も、既存ネットワークで対応可能だ。新規の地上インフラ構築を必要としない設計が、スケーラビリティの強みとなる。
LC60はQ1 2027年に2機のSWIRSAT衛星打ち上げを予定し、2029年までに18機の完全な観測衛星群の構築を目指している。オーストラリア宇宙機関とウェスタンオーストラリア州政府がプロジェクトを支援している。Transcelestialはこれまで6G StarLabミッションでターミナルを軌道上で稼働させており、シンガポールとスペインの2ヶ所で地上局を運用している。月産100機以上のターミナル製造能力を備え、複数ミッションに同時対応することで、衛星通信インフラとしての地位を強化している。
出典: SpaceNews
