ドイツのスタートアップが欧州初、完全民間ロケットの軌道投入に成功

2018年にミュンヘン工科大学の学生3人によって設立されたドイツの企業イザー・エアロスペース(Isar Aerospace)が、9月6日に民間開発ロケットで初めて低軌道への打ち上げに成功した。同社のスペクトラム(Spectrum)ロケットが北ノルウェーのアンドーヤ宇宙港から発射され、7分後に軌道に到達。欧州初の完全商用軌道投入ロケットとなった。

スペクトラムは全長28メートルの2段式ロケットで、東部標準時間午後4時12分(協定世界時20時12分)に発射された。北極圏内に位置するアンドーヤ宇宙港からの打ち上げは、夏の終わりの空から薄青い光が消える時刻となった。同社の共同創業者で最高経営責任者(CEO)のダニエル・メッツラー(Daniel Metzler)は「今日、イザー・エアロスペースは欧州大陸からの宇宙へのアクセスを開いた」とコメントした。

数年で数十年分を達成

欧州の宇宙産業は堅牢で伝統あるセクターとされてきたが、業界の革新性については定評がない。イザーが設立された2018年当時、特に大西洋の東側には「ニュー・スペース」産業と呼ばれる新興勢力がほぼ存在していなかった。メッツラーは記者会見で「人々は『うまくいくはずがない』と言った。今後も同じことを言い続けるだろう。われわれはただ彼らが間違っていることを証明するだけだ。あきらめることは我々のDNAに存在しない」と述べた。

軌道到達までに要した期間は8年。これは欧米の他の成功した民間ロケット企業と同様のタイムラインだ。その間、同社は複数の民間資金調達ラウンドを通じておおよそ10億ドルを調達し、現在の従業員数は約500人に達している。欧州ではイザーが最も資金が潤沢な民間ロケット企業となった。

欧州の宇宙産業に競争をもたらす

イザーの成功は、欧州宇宙機関(ESA)と欧州の宇宙産業にとって朗報だ。衛星を軌道に投入するために低コストのロケットを求める動きが続いている。現在、欧州の既存打ち上げプロバイダーであるアリアンスペース(Arianespace)とアヴィオ(Avio)は、アリアン6(Ariane 6)とヴェガC(Vega-C)ロケットを運用している。これらは信頼性は高いものの、政府補助金の支援を受けてもなお競争力は限定的だ。

イザーは政府資金ではなく民間融資を基盤として成長し、将来的に商用および政府ビジネスを獲得する野心を持つ。欧州政府は従来、資金を供給する見返りにロケット製造地の指定に発言権を持つ「ジオグラフィカル・リターン」と呼ばれる調達モデルに慣れてきた。イザーのようなスタートアップはこのモデルの外で動く企業だ。メッツラーは「短期でできることを過大評価し、長期でできることを過小評価する人は多い。技術者、技術者、オペレーター、強力なサポートチームといった人間的要素を忘れてはならない」と指摘した。

関連動画

出典: Ars Technica Science