地球軌道外に新型衛星網、月への道案内システムが構想
月への有人探査が本格化する中、深宇宙での航法確保が課題になっている。現在、遠方の宇宙機の位置特定は地球上の施設に依存しているが、MITのリンカーン研究所の研究者らは軌道上に衛星群を配置する独立した深宇宙航法システム「LightHOUSE」(ライトハウス)の構想を打ち出した。
現在、深宇宙での通信や航法を担う主役はNASAのディープスペースネットワーク(DSN)だ。1950年代に開発されたこのテレスコープ群は、地上で最大限遠く離れた配置でも2つの施設間の距離が16,600キロメートルに留まる。一方、月までの距離は384,000キロメートルであり、火星に至ってはさらに遠い。このため宇宙機の正確な軌道位置確認には数時間を要する場合もあり、DSNへのアクセス競合も激化しているという。
LightHOUSEは3機の衛星から構成され、地表から約160万キロメートルの軌道に配置される想定だ。この高度は月までの距離を上回り、衛星間の距離を火星や金星への距離に比肩する長さに確保できる。こうした広大な「ベースライン」により、宇宙機の微小な位置変化をより大きな相対距離の変化として捉えられ、DSNより迅速に軌道情報を取得できるという。
月の裏側での通信を実現
LightHOUSEのもう一つの利点は月の裏側への対応能力である。アルテミスII(Artemis II)ミッションは月の遠側に到達した際、40分間の電波途絶を経験した。LightHOUSEの衛星群が月の先まで軌道を延ばすことで、この秘境での精密な位置情報提供が可能になる。ただし高エネルギー信号の送信により、月の裏側で比較的保持されている電波環境への影響も懸念される。
現在の深宇宙探査機は、DSNとの通信用に高出力無線アンテナを搭載する必要があり、このアンテナの駆動に大きな電力を消費する。LightHOUSEではビーコン衛星側が高エネルギー信号を送出する仕組みで、探査機の負担を大幅に軽減できる見通しだ。
LightHOUSEの通信基盤となるのは光学通信技術である。リンカーン研究所は自由空間光学システムの改良を継続しており、アルテミスIIに�載されたO2O光通信システムやプシケ(Psyche)ミッションの深宇宙光通信ネットワーク(DSOC)の成功実績を有する。これらの技術がLightHOUSEの実装に応用される可能性がある。
ただし実現への道はまだ遠い。現在の開発資金はリンカーン研究所の内部研究開発費に依存しており、NASA含めいかなる主要宇宙機関や民間企業からも採択されていない状況が続いている。深宇宙の交通量が増加する中で、DSNの大規模更新か全面刷新は避けられないとみられ、その解決案の一つとしてLightHOUSEが役割を担う可能性は否定できない。
出典: Universe Today
