バイナリ星系に「地球2.0」を探す新しい宇宙望遠鏡計画
地球と同じサイズの岩石惑星が、太陽に似た星の生命居住可能領域を周回する姿。天文学者たちが数十年にわたって追い求めながらもいまだ発見できていない、その真の「目標」に迫るプロジェクトが動き出そうとしている。アーカイブで公開された新論文が、NASAの新型スモールエクスプローラーミッション「相対測定法による生命居住可能系外惑星探査衛星」(SHERA)という革新的なアプローチを提唱している。
周辺の太陽型星の約半数は単独ではなく、一つ以上の伴星を伴っている。そうした連星系では、複数の星の重力相互作用が惑星の軌道を複雑にし、惑星探査を格段に難しくする。SHERAはこうした複雑な力学を逆手に取り、連星系に潜む地球サイズの世界を見つけ出そうという戦略だ。
従来手法の限界と新しい測定法
現在、天文学者が系外惑星を探す主な方法は三つ存在する。ケプラーやTESS(系外惑星探査衛星)が採用するトランジット法は、惑星が恒星の前を通る際の光の減光を観測する手法だが、軌道が地球方向に向いている必要があり、成功には運が大きく左右される。
地上の分光計が用いる視線速度法(RV法)は、惑星の公転による恒星の「ふらつき」を計測する。しかし地球のような惑星が太陽型星から1天文単位離れて起こす動きは、その星の速度でわずか毎秒9センチメートル程度。星表面の活動に起因するノイズの限界が毎秒約50センチメートルであるため、地球類似惑星の検出には現在の機器では対応不可能だ。
残された手法がアストロメトリ(位置測定法)である。恒星の背景の星々に対する正確な位置の変動を測定する手法だが、感度に問題があった。33光年離れた太陽型星の周りを公転する地球のような惑星は、わずか0.3マイクロアークセクの「ふらつき」しか引き起こさない。現在最も精密なアストロメトリミッションであるガイア(GAIA)の精度は約100マイクロアークセクであり、必要な精度にはほど遠い。
連星を基準とした革新的アプローチ
SHERAが着眼した点は、ガイアの手法を改良し、ノイズ源を根本的に除去することだ。背景の微弱な星々を基準にする代わりに、SHERAは明るく、かつ近接した連星ペアに焦点を当てる。重力で結びついた連星は宇宙空間で共に移動する参照点として機能し、両星間の距離を正確に測定することで背景の星由来の誤差を完全に排除できる。同時に大規模な光学的歪みも相殺される。
片方の太陽型星(連星の両方が太陽型の場合もある)に惑星が存在すれば、その惑星は相対的な星間距離に周期的な変動をもたらす。これがSHERAの検出対象だ。
サブマイクロアークセクの精度を達成するため、SHERAは回折瞳(diffractive pupil)と呼ばれる技術を採用する。半導体製造と同じ電子ビームリソグラフィによって、22センチメートルの宇宙望遠鏡の鏡に複雑な位相パターンを刻み込む方法だ。このパターンは光学的な定規として機能し、恒星の光学的歪みや熱膨張の時間変化を測定する。星光を複数のピクセルに既知のパターンで分散させ、検出器の微細な欠陥を平均化する。さらに、太陽黒点による変化と惑星由来の信号を区別するため、恒星のスペクトルと吸収線の変動を監視し補正する。
SHERAチームは地球から17パーセク以内の7つの近傍連星系を観測対象に絞り込んでいる。達成を目指す科学目標は三つ。最も近い対象星周辺の地球質量惑星を発見することが第一。次に、連星が惑星形成を抑制するのかどうかを、距離の関数として検証する。そして地上の視線速度観測データを補完するために、アストロメトリデータを組み合わせた追加的な文脈を提供することが第三の目標だ。
出典: Universe Today
