BepiColombo、太陽嵐がもたらす粒子をメルクリウス表面で初観測
太陽からの荷電粒子がどのように惑星の磁場を突き抜け、表面に到達するのか。ヨーロッパ宇宙機関(ESA)と日本宇宙航空研究開発機構(JAXA)の共同ミッション・BepiColombが、この問題を直接観測する貴重な機会を得た。2024年9月4日、同ミッションの4度目のメルクリウス接近フライバイ時に、太陽放射線・粒子分析計(SIXS)がメルクリウスの表面に到達した高エネルギー粒子を検出したのだ。
BepiColombは打ち上げから8年間で6度のメルクリウス接近フライバイを実施している。2024年9月のフライバイでは、航宇宙機がメルクリウス表面から165キロメートルの高度まで接近した。この距離は、最終的な周回軌道での接近距離よりもはるかに近い。
タイミングの妙とも言えるのが、この接近時に太陽で大規模な粒子放出現象が発生していたことだ。ヘルシンキ大学を率いる研究チームは学術誌『Nature Astronomy』に発表した論文で、このユニークな観測機会がもたらした知見をまとめた。SIXSはヘルシンキ大学の技術者らによって開発された機器で、同大学宇宙物理学教授のエミリア・K・J・キルプアが主執筆者かつ主任研究官(PI)を務めている。
メルクリウス磁場の「脆さ」が浮き彫りに
SIXSの観測結果は驚くべき直接性をもって示された。太陽爆発時、大量の高エネルギー粒子が広い範囲にわたってメルクリウス表面に到達したのだ。これらの粒子が表面の原子や分子と相互作用する際、X線が発生する。
キルプアは「このフライバイは本当にユニークでした。航宇宙機は最終周回軌道での高度より圧倒的に低い位置まで来ましたし、まさにそのときに太陽で大規模な粒子放出が起きたというのは幸運でした」とヘルシンキ大学の声明で述べている。
メルクリウスの磁場は地球よりはるかに弱く、その磁気圏も地球のそれと比べて極めて小規模だ。この弱い防御力は、太陽からの高エネルギー粒子がいかに容易に表面に到達するかを示唆している。
地球の宇宙天気対策への応用
本研究の重要性は、単なる学術的好奇心には留まらない。メルクリウスで観測された現象は、地球で起こりうるシナリオに直結している。強力な太陽嵐が地球の磁気圏を圧縮するとき、メルクリウスで観測された条件に類似した状態が生じる。SIXSの観測データは、強烈な宇宙嵐時に地球近傍の宇宙環境と大気がどれほどの粒子放射線にさらされるかを評価するうえで、貴重な指標となる。
トゥルク大学宇宙物理学教授で、SIXSの副主任研究官を務めるラミ・ヴァイニオは、このデータが極限的な宇宙天気条件下での低軌道(LEO)上の商業・科学活動の安全を確保することを目指す宇宙レジリエンス卓越センター(Center of Excellence in Space Resilience)でも活用される見通しを示している。太陽嵐は衛星や電力網、その他の宇宙・地上インフラに実害をもたらすことが知られており、こうした予測能力の向上は極めて現実的な価値を持つ。
なお本記事執筆時点で、メルクリウス周回軌道投入機(MPO)とメルクリウス磁気圏探査機(Mio)は転送モジュールから分離済みで、11月に両軌道機がメルクリウス軌道に進入し、12月には互いに分離される予定となっている。
出典: Universe Today