火星の衛星フォボスへ、日本の無人探査機が出発

2026年10月20日、火星とその衛星フォボスを目指す大型ロケットが種子島宇宙センターから打ち上がった。火星衛星探査ミッション(MMX)は、日本の次世代重力ロケット「H3」で午前4時41分に発射され、17分後にロケットから分離して火星への旅路についた。火星衛星探査ミッションは、火星圏から初めてのサンプルリターンを実現する日本の野心的なプロジェクトである。

火星到着から採集まで、3年以上かけたミッション構成

火星衛星探査ミッションは2027年8月に火星に到着する予定だ。その後約1ヶ月をかけて、火星の二つの衛星のうち大きい方のフォボスの軌道へ移行する。ドイツとフランスが開発した小型着陸機「イディフィックス」を搭載した火星衛星探査ミッションは、まずイディフィックスをフォボスの表面から40~100メートル上空から投下する。フォボスの重力は極めて弱いため、ローバーは落下時の衝撃でも損傷しない。どのような姿勢で着地しても自動的に正常な状態に戻り、科学活動を開始できる設計になっている。

2030年には火星衛星探査ミッションの母体がフォボスに着陸し、レゴリス(表土)サンプルの採集を行う。採集の目標は最低でも10グラム以上の物質である。サンプル採集後は、火星のもう一つの衛星デイモスのフライバイ観測を行った後、サンプルをカプセルに収めて地球へ送り返す予定だ。采集が成功すれば、サンプルは2031年に地球に戻ってくる見込みである。

なぜフォボスなのか、2つの衛星の起源の謎

火星の二つの衛星がどのように形成されたかは、惑星科学の分野で激しく議論されている問題だ。最も有力な仮説の一つは、太陽系の初期段階に火星表面に巨大な天体が衝突し、その衝撃で火星周辺に破片の円盤が形成され、その中からフォボスとデイモスが凝集したというものである。この説は、二つの衛星の軌道がほぼ円形で赤道付近という観測と合致する。

ただし問題がある。通常、衝突で生じた破片の円盤は衝突した天体の近くに形成されるが、デイモスはフォボスよりもはるかに遠い軌道を回っている。研究によれば、衝突が両方の衛星を作り出す確率は3パーセント未満であるとされている。

もう一つの理論は、両衛星が捕獲された小惑星であるというものだ。フォボスとデイモスは火星とは異なる物質でできているらしく、これは衝突説に反する一方で、小惑星捕獲説を支持する。しかし両衛星が火星の赤道を中心に2度以内の軌道で公転することは、別々の小惑星が二度も捕獲される可能性は低いことを示唆する。それでも研究によれば、この説の方が衝突シナリオより可能性が高いとも示されている。

第三の可能性として、火星が単一の小惑星を捕獲した後、惑星の重力作用でそれが破砕され、生じた破片から両衛星が形成されたという仮説がある。この場合、異なる物質組成と赤道近くの軌道という両方の特徴を説明できる。

さらに複雑な仮説も存在する。火星の3分の1ほどの大きさの天体が衝突して広大な破片円盤が形成され、その内側に極めて大きな衛星(フォボスの1000倍)が最初に作られた後、その重力相互作用により他の衛星も円盤内で形成されたとするものだ。数千年で火星は数個の小さな衛星と一つの巨大な衛星からなる衛星系を持つに至ったが、破片円盤が何百万年かけて散散し、火星の潮汐作用によって大多数の衛星は惑星に衝突して失われたという筋書きである。

前例に支えられた期待

JAXAはサンプルリターン技術で実績を積み重ねている。はやぶさは2010年に小惑星イトカワ(25143)から採取したサンプルを地球に返却し、はやぶさ2は2020年に小惑星リュウグウ(162173)のサンプルを帰還させた。この成功事例は、火星衛星探査ミッションも成功する見通しを強める要素である。もしサンプル回収に成功すれば、火星圏から初めて手にするサンプルが、火星の二つの衛星がどのように生まれたかという根強い謎の解明に道を開く可能性がある。

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出典: Universe Today