BepiColombo、水星への最終段階へ 推進モジュールの分離に成功
太陽系最内惑星・水星へ向かうBepiColemboが、9月3日に重要な分岐点を迎えた。8年に及ぶ航行を経て、推進段階からの分離に成功し、水星への軌道投入に向けた準備が整ったのだ。この分離は今後数ヶ月間に続く一連の作業の第一段階であり、予定どおり進行したとされる。
8年の航行を支えたイオンエンジン
2018年に打ち上げられたBepiColomboは、過去8年間で計9回の重力加速度(gravity assist)を実行してきた。地球1回、金星2回、そして水星自体6回である。一見すると奇妙に思えるかもしれないが、この場合の水星との重力加速度操作は航速を上げるのではなく、低下させるためのものだった。太陽に向かって落下することは加速に有利だが、太陽に近い目標へ到達するために減速することは難題であり、この課題を担ったのが水星トランスファーモジュール(Mercury Transfer Module、MTM)と呼ばれるイオンエンジン(ion drive)である。
MTMは数十億キロメートルに及ぶ航行を経て、各フライバイ(flyby)の間にエンジンを噴射し、航速を調整したり機体の角度を修正したりしてきた。しかし軌道投入が間近に迫った今、その役目は終わりを告げることになったのだ。
ドイツから送られた分離信号
9月3日、ドイツのダルムシュタットにあるヨーロッパ宇宙運用センター(European Space Operations Center)のオペレーターは、BepiColomboに分離を指令する電波信号を送信した。この信号が200万キロメートルの距離を伝わるのに11分を要したため、オペレーターは分離の過程をリアルタイムで観察することはできなかった。
信号を受け取ったBepiColomboは、航空宇宙産業で「火工品」(pyrotechnics)と呼ばれる手法を用いてMTMとの接続部を焼き切り、その直後に一連のばねを動作させてMTMを機体から押し出した。衝突を回避するためのこの設計は功を奏し、分離後のMTMと本体の間に生じた周波数シフト(Doppler shift)を捉えた電波信号によって、分離の成功が確認された。続いて本体の太陽電池パネルが展開され、独立した電力供給が始まった。
ESAとJAXAの共同ミッション
BepiColomboの実体は単一の機体ではなく、欧州宇宙機関(ESA)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)による共同プロジェクトである。各機関が独自の軌道船を供給しており、ESAの水星惑星軌道船(Mercury Planetary Orbiter、MPO)は通称「Bepi」と呼ばれ、次段階の運用を引き継ぐ。最終的にMPOは極軌道に入り、水星の表面を高解像度で撮像し、鉱物組成を分析し、この奇妙に大きな鉄核を研究する予定である。
一方、JAXAの水星磁気圏軌道船(Mercury Magnetospheric Orbiter、Mio)は楕円軌道に投入され、水星の磁場、特に太陽風との相互作用と脆弱な「外気圏」(exosphere)の保持メカニズムを観測する。2つの軌道船がもたらすデータにより、大気を欠いた岩石天体が太陽からの強烈な放射と磁気嵐にどのように曝されているかが明らかになるだろう。
数ヶ月先に控える次の段階
成功した分離は長い道のりの始まりに過ぎない。11月21日には、結合状態の機体による軌道投入操作が実施される予定だ。その数週間後の12月9日から10日にかけて、MioとMPOは互いに分離し、それぞれの軌道へ向かう。両機体の展開と準備が完了すれば、科学運用は4月の開始を予定している。8年間の航行を経た今、残り7ヶ月の待機は決して長くはないはずだ。この間、BepiColomboは水星軌道の灼熱環境と太陽がもたらす荒れ狂う宇宙天気の試練に直面することになる。これまで多くの困難を乗り越えてきた機体が、あと数ヶ月を生き抜くことを願うばかりである。
出典: Universe Today
