ダークフォトン探索に新展開、従来の宇宙加熱シナリオを覆す発見
ダークマターの有力な候補とされてきた「ダークフォトン」について、従来の理論では説明できない性質が明らかになった。メリーランド基礎物理学センター(MCFP)のアンソン・フック教授と、ウォータールー大学のペリメーター理論物理研究所(PITP)に所属するジュンウー・ファン上級博士研究員、モハマド・シャラビ研究員らの国際共同研究チームが、物理学レビュー・レターズ(Physical Review Letters)に発表した成果である。この新しい知見により、ダークフォトンが従来考えられていた場所以外に存在する可能性が広がった。
非線形プラズマ過程の発見が打ち破る既得観念
これまで50年以上にわたって探索が続くダークマターは、宇宙全体の質量の約85%を占めると理論的に推定されている。ダークフォトンはその候補粒子の一つであり、理論上、初期宇宙を加熱し、見える世界(標準的な素粒子)と暗黒領域を結ぶ役割を果たすと考えられてきた。
物理学者たちはこれまで、初期宇宙に存在した中性水素の高温雲の中でダークフォトンが通常の光に変換され、その過程で加熱が起こると予測していた。もしそうであれば、この加熱の痕跡は観測可能であり、宇宙の物質エネルギー密度のパラメータ空間の広大な領域が除外されてきた。フック教授はこの状況を「ダークマターの強度は実際よりも1億倍(10の8乗倍)弱くなければならないと結論づけられていた」と説明する。
しかし新しい研究は、この仮説の根本的な誤りを指摘する。従来は変換過程が線形であると仮定され、エネルギーがゆっくりとプラズマに変換されると考えられていた。ところがファン研究員は、計算機シミュレーションによる検証で「エネルギーがプラズマに変換される時点で、システムが劇的に非線形化し、ごく少量のエネルギー変換後に過程が停止する」ことを発見した。プラズマ物理学を専門とするシャラビ研究員を交えた共同研究により、過去15年間採用されてきた線形的な扱いが不完全であることが明らかになったのだ。
探索範囲が10桁拡大、新たなパラメータ空間が解放
研究チームの解析によれば、従来考えられていたダークフォトンへの宇宙論的制約は、約10⁻¹⁵電子ボルト(eV)から10⁻⁶eVの周波数範囲(おおむねキロヘルツからギガヘルツに相当するラジオスペクトラム領域)にわたる、およそ10桁分のオーダーで無効であるという。この領域はこれまでパラメータ空間から除外されていたもので、今回の発見によって初めて探索対象として解放された。
シャラビ研究員は「初期宇宙のプラズマを正しく計算することで、実験は新しいパラメータ空間を調査し、実際に何かを観測する可能性が生まれる」と述べ、さらに他の難しい素粒子の探索にも応用できる点を強調している。この成果は、中性子星や白色矮星の磁気圏での現象など、宇宙物理学の複数の系における理論の再検討を促す可能性も示唆している。
出典: Universe Today
