直径460キロ、謎に満ちたシアパレッリ・クレーター――火星探査機が映す古い痕跡
火星の最大級のクレーターの一つを、欧州宇宙機関(ESA)の火星探査機マーズ・エクスプレス(Mars Express)が映像化した。直径460キロに及ぶシアパレッリ・クレーターは、その巨大さとは裏腹に比較的浅い地形をしているという。
数十億年の堆積が作り上げた現在の地形
このクレーターが現在の浅い姿になったのは、数十億年にわたる地質的な作用が関係していると考えられている。風に吹き飛ばされた砂塵、水による堆積、溶岩流、あるいはこれらが複合的に働いた結果として、クレーター内に大量の物質が埋もれた可能性がある。火星の表面にはかつて水が存在していた兆候があり、シアパレッリ・クレーター周辺も例外ではない。かつてこの地域に湖があった可能性もあるという。
望遠鏡の限界が生んだ「運河」の幻
シアパレッリ・クレーターの名前は、イタリアの天文学者ジョバンニ・スキアパレッリ(1835~1910年)にちなむ。彼はながく水星と金星を研究していたが、火星の観測によって最も知られるようになった。1877年の「大接近」と呼ばれた火星が地球に最接近した時期に、スキアパレッリは火星表面の直線状の暗い線を多数観測し、これを水で満たされた自然の水路だと考えた。イタリア語で「カナーリ」と呼んだこの地形は、後の翻訳で「運河」という人工的なニュアンスを持つ言葉へと変わった。これが誤解を招き、火星に知的生命体による灌漑・輸送施設が存在すると信じる天文学者や一般人が現れることになった。
現在では、スキアパレッリが観測した「カナーリ」は当時の望遠鏡の精度の限界がもたらした幻であり、火星には現在、水で満たされた水路は存在しないことが分かっている。しかし、この地域にかつて水が存在していたという仮説は、むしろ現代の科学的証拠によって支持されている。
