火星の塵が乗組員に与える脅威――パーサヴィアランスが明かす長期測定データ
火星表面の微細な塵の危険性が、NASAの火星探査機パーサヴィアランスによる1645火星日にわたる測定を通じて明らかになろうとしている。この探査機が搭載するスペーススーツ材料のサンプルに付着した極微細粒子を分析した結果が、10月27日にアメリカ学術会議紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences)で発表される予定だ。
測定対象となった火星塵は単なる表面の汚れではない。肺に侵入し、血流に入る可能性がある程度に小さい粒子も含まれている。これらの知見は、今後のNASA火星ミッションにおけるスペーススーツと居住施設の設計、塵除去手順、乗組員の健康基準に反映される見通しだ。
半世紀前の教訓が今に生きる
火星塵への対策は新しい課題ではない。NASAのアポロ計画の時代から、月面探査では塵が大きな課題となってきた。アポロの乗組員が経験した問題は深刻だった。月面塵がスーツのバイザーに傷をつけ、外層を劣化させ、シール部分を傷つけたのだ。一部の乗組員は症状を報告していたとされる。
パーサヴィアランスが提供するデータは、こうした過去の困難を解決するための実践的な材料となる。NASAの惑星科学部門の代理責任者リンゼイ・ヘイズは「NASAは課題を実現可能な解決策に変え、当初の目的を超えた問いに答えるため、手持ちのデータを創意工夫して活用する長い歴史を持っている」と述べている。
火星到着前の防御設計へ
火星塵の実測データを得ることは、アメリカ人宇宙飛行士が火星に到着する前に既存設計を改善するため、エンジニアと飛行医学者にとって不可欠な材料となる。ジェゼロ・クレーターの西辺を横切る乾燥した河床ネレトヴァ・ヴァリスを背景に撮影された360度パノラマには、この古い火星環境での塵の実態が映っている。探査機が実地で収集した微粒子の測定データは、単なる科学的知見を超え、将来の乗組員の安全性を左右する設計指針となるのだ。
