ハッブル宇宙望遠鏡がローマン宇宙望遠鏡の重力レンズ観測を支援
ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡(Nancy Grace Roman Space Telescope、NGRST)が太陽・地球ラグランジュ点L2に向かう途中、ハッブル宇宙望遠鏡との協力体制が宇宙観測の新たな段階を切り開こうとしている。ローマン宇宙望遠鏡は予定された5年間のミッションで、ダーク・エネルギーが宇宙に及ぼす影響、宇宙の構造成長、一般相対性理論の一貫性を測定するという複数の目標を抱えている。その中で重力レンズ(gravitational lensing)観測が重要な役割を果たす。
重力レンズには強い重力レンズと弱い重力レンズの2種類がある。強い重力レンズでは銀河団のような巨大な前景天体が背景の天体と一直線に並び、背景天体の像が拡大・歪曲される。この歪みによって科学者は前景銀河の質量を測定でき、可視物質だけでは説明できない部分から暗黒物質の量を計算することができる。ハッブル宇宙望遠鏡のある画像では、赤色の前景銀河が背景銀河の像を2つの弧に歪ませており、より大きな弧と小さな弧が観測されている。天文学者はこうした画像から前景銀河の全体質量と背景銀河の拡大度合いを測定し、前景銀河に含まれる暗黒物質の量を決定することができる。
観測視野の違いが生み出す相補的役割
ハッブル宇宙望遠鏡とローマン宇宙望遠鏡は観測方法が大きく異なる。ハッブル宇宙望遠鏡は主に可視光と紫外線で観測し、赤外線はわずかであるのに対し、ローマン宇宙望遠鏡は赤外線を主としながら可視光を少量用いる。ただしより決定的な違いは視野の広さにある。ハッブル宇宙望遠鏡は個別の天体を詳細に観測する能力に長けているが、ローマン宇宙望遠鏡は広視野サーベイ望遠鏡として設計されており、ローマンの観測画像はハッブルより200倍以上大きく、複数の検出器に分散して記録される。
この構造的な違いが、ハッブルにローマンのミッションを支援する役割をもたらす。ハッブル宇宙望遠鏡は1つの強い重力レンズを詳細に観測し、その仕組みをモデル化することができる。そのモデルがローマン宇宙望遠鏡による重力レンズの解析に役立つのだ。鍵となるのはポイント・スプレッド・ファンクション(point-spread function、PSF)という概念である。望遠鏡は点光源を点として結像しないため、検出器上に一定のパターンを形成し、収差や回折スパイク、その他の問題を含む。ハッブル宇宙望遠鏡は1つの検出器で各重力レンズを個別に観測するため、PSFの理解と補正が相対的に容易である。
ローマンが直面する重力レンズ検出の課題
ローマン宇宙望遠鏡は高緯度広視野調査(High Latitude Wide Area Survey、HLWAS)で主に重力レンズを検出する。HLWAS は約5,000平方度の空域(全天の約12%)をカバーし、約160,000個の重力レンズの検出が予測されている。2025年の論文では研究者らが「146秒の単一露光で約160,000個の検出可能な強い重力レンズがHLWASに存在し、そのうち約500個が詳細な部分構造の特性化に適した十分な信号対雑音比を備える」と予測している。つまり検出される重力レンズのうち、実際に詳細な追跡観測に利用できるのは500個程度に過ぎない。ローマン宇宙望遠鏡が複数の検出器に分散した広視野で観測を行う際に生じるPSFの複雑さは、ハッブル宇宙望遠鏡の精密な個別観測を通じてあらかじめ理解することで、初めて克服できるのである。
出典: Universe Today
