再突入時の機体保護、磁場を使う新しい検証方法が確立へ

宇宙機の大気圏再突入時に発生する極限の熱を、断熱材の消耗ではなく磁力で受け止める技術の開発が進んでいる。東京都立大学の研究チームが、この磁気流体力学(MHD)ブレーキと呼ばれるシステムを実験する新たな検証設備を構築したと発表した。従来の耐熱シールドに代わるこの方法は、再利用可能なロケット時代における宇宙機の軽量化と積載量の増加に大きな可能性を秘めている。

磁場で「見えないクッション」を作る仕組み

MHDブレーキの原理は、宇宙機が大気圏に突入する際に生じる現象を巧みに利用している。機体の前方では空気がプラズマに変わり、微かに電離した状態になる。このプラズマに対して、宇宙機内部の磁場をローレンツ力で押し当てることで、プラズマと機体の間に目に見えない磁場のクッションが生まれる。この磁場のクッションが二つの役割を果たす。機体が受ける熱を削減することと、空気抵抗を増大させて速度を落とすことである。

理論上は有効だが、実際に検証することは容易ではなかった。これまでの実験で課題になっていたのが、永久磁石(ネオジム磁石)の性能限界である。最大磁束密度は0.8テスラ程度に留まり、高速で流れ込む気流に対して十分な力を発揮できなかった。また、永久磁石は形状が固定されるため、異なる宇宙機の設計に対応しにくいという問題も抱えていた。

パルス電源で強力な磁場を瞬時に発生

東京都立大学の研究チームは、パルス形成ネットワーク(PFN)と呼ばれる電気回路に着目した。コンデンサとインダクタを交互に組み合わせたこの装置は、膨大なエネルギーを短時間に蓄積して放出できる。ほんの数分の一秒の間に大きな電力を供給するため、独立した冷却装置が不要な点も利点である。

研究チームは新しい磁気システムを検証するため、MX-6.0という8メートル長の拡大管施設を構築した。この設備は秒速7.7キロメートルに達する衝撃波を発射し、再突入時の宇宙機が経験する環境を再現する。検証用として、異なる磁気特性を持つ二つの20ミリメートル試験モジュールを製作した。第1号機は先端が緩やかに湾曲した円筒形で、磁束密度は約1.24テスラを発生させる。ネオジム磁石の最大出力より50パーセント高い値である。第2号機は小惑星サンプルリターン機MUSES-Cをモデルにし、同程度のコイルで1.58テスラの磁場を生み出す設計となっている。

実験で、PFNは入射する衝撃波のパルスに同期し、110マイクロ秒から148マイクロ秒の間、定常的な磁場を維持することに成功した。高速度カメラによる観察で、両試験機の性能向上が数値として捉えられた。第1号機は発光する衝撃領域の厚さが15.7パーセント増加し、第2号機は16.2パーセント増加した。この厚さの増加は、磁気障壁と空気抵抗の向上に直結するため、MHDシステムの性能向上を意味する。

パイロット実験は風洞試験専用として設計されており、この役割を高い精度で果たすことが実証された。東京都立大学の検証設備が国際的な開発の拠点として機能する可能性が広がっている。

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出典: Universe Today