人工日食で地球型惑星を直接撮像――NASAの野心的ハイブリッド望遠鏡構想
岩石惑星の直接撮像を実現するため、NASA主導の研究チームは斬新な戦略を打ち出した。地球から17万5000km離れた楕円軌道に配置した遮光板(スターシェード)と、次世代の大型地上望遠鏡を組み合わせる「ハイブリッド天文台」の構想である。この計画は「地球型系外惑星ハイブリッド天文台」(HOEE)と呼ばれ、チリ北部の2030年後半の観測開始が予定されているヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡(ELT)との連携を見込んでいる。
HEOEの核となるのは、直近20光年圏内にある岩石質で地球サイズの世界を観測する能力だ。現在、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の近赤外カメラやNASAの計画するローマン宇宙望遠鏡(Roman Space Telescope)のコロナグラフ装置といった直接撮像機器では、地球型系外惑星の観測は不可能とされている。Nature Astronomyに2026年に発表された論文の執筆者らが指摘する通り、光学波長での観測には、より効率的で現在利用可能な手法が必要だ。
人工日食で恒星光を遮断
スターシェードの役割は、観測対象となる恒星の光を完全に遮蔽することにある。系外惑星は光学波長において恒星より約10億倍暗いため、この遮蔽がなければ反射光を検出できない。論文によれば、このオカルター(遮光装置)は48本の花弁で構成され、各花弁の長さは24.5メートル、中央部の円盤直径は50メートルになる設計だ。スターシェードは目標となる恒星と地上望遠鏡の視線上に位置し、人工的な日食を作り出す仕組みである。
NASAゴダード宇宙飛行センターの上級天体物理学者ウラジミール・エアラペチャン氏はパリで筆者に述べた。「より効率的で現在利用可能なハイブリッド天文台が必要です。光学光で系外惑星系を観測できるものです」と語った。
スターシェードの位置決めは、ホットハイドロジェンガスで駆動するマイクロスラスターを用いて、6メートルの精度で調整される見通しだ。地球の回転に同期した長い楕円軌道を保ち、ステーション・キーピング用に化学推進、観測対象の切り替え用に太陽電気推進を組み合わせる設計となっている。
生命の化学署名を求めて
HEOEが提供する高い感度により、観測開始から1分以内に地球型惑星の検出が原理上可能になると見込まれている。システムの鮮明な画像は、複数の系外惑星を同時に捉え、それぞれを恒星本体から区別することを可能にする。
エアラペチャン氏の関心は、生命を支持できる大気環境を示す化学的指標にある。特に注目するのは、F型星、G型星、K型星といった太陽型恒星を公転する岩石惑星である。「赤と緑のオーロラのスペクトル線を探索しています。これらは惑星の大気が窒素と酸素を含むことを示す信号です」とエアラペチャン氏は述べた。水素燃焼主系列星の初期10億年のステージにある恒星系が対象であり、生命の前駆体ないしは原始的な生命を有する可能性のある惑星を照準としている。
計画の総事業費は約10億ドル規模と見積もられている。最終的なオカルター設計はインフレータブル構造(膨張式)を採用し、打ち上げペイロードの総質量を1500kg以下に抑える方針だ。スターシェードは標準的な打ち上げ機のペイロード・ベイに効率的に収納可能な構造を目指している。
HEOEプロジェクトチームはすでに2027年の承認を目標に、NASA革新的先端概念計画(NIAC)のフェーズB資金申請を行っており、数十年にわたって「不可能な夢」とされてきた構想が、NASAの支援のもとで実現可能な現実へと変わろうとしている。
出典: Universe Today
