衛星通信市場の構造転換 2035年に1450億ドル規模へ
衛星通信サービスの世界市場規模が2035年までに1450億ドルに達し、今後9年間で44%の成長を遂げるとの予測がNovaspace(ノバスペース)から発表された。同社が2026年10月にパリで公表した第33版「衛星接続性およびビデオ市場レポート」によるもので、これまでの産業構造が根本的に変わる転機を迎えることを示している。
注目すべきは、成長の主軸がデータサービスへシフトする点だ。現在は映像配信が衛星通信事業の最大の収益源だが、今後の牽引役はデータサービスに切り替わる。データサービスが占める割合は現在の26%から2035年には68%へ跳ね上がり、ほぼ1000億ドル規模の市場規模に達する見通しだ。消費者向けブロードバンドから防衛、政府、企業向けまで、あらゆる分野での接続需要の加速が背景にある。
軍事用途とNGSO衛星が次代のエンジン
今後10年間の収益増加をけん引するのは、消費者向けブロードバンド(226億ドル)、軍事用衛星通信(192億ドル)、企業向けネットワーク(172億ドル)の三つの分野だ。特に軍事用衛星通信は防衛支出の増加と軍事作戦へのサテリコム(衛星通信)活用の急速な広がりにより、産業全体の重要な成長エンジンへと浮上している。
一方、NGSOコンステレーション(非静止軌道衛星群)は政府・防衛分野で強靭な通信容量の供給源として急速に重要性を増している。NovaSpaceのプロジェクトマネージャーにしてレポート編集者のディミトリ・ブッシュは「衛星接続性はいよいよ主流へと移行している」と述べ、NGSO容量の急速な拡大、帯域幅コストの低下、復元力があり常時利用可能な接続への需要増加が、衛星通信の競争戦略を根本から変えていると指摘している。
衛星容量市場は2025年の水準から3倍以上の規模となる2035年までに460億ドルを超える。映像配信は2025年に最大容量セグメントだったが、2035年には容量収益の3%に縮小する一方、消費者向けブロードバンドと軍事用衛星通信が全体の半分以上を占めるようになる。高スループット衛星(HTS)システムの普及とNGSO企画の増加により帯域幅コストが低下し、衛星通信は大衆市場へと拡大。スターリンク(Starlink)などの事業者が地上系ブロードバンドと価格競争を繰り広げるようになり、光ファイバーや無線通信の代替手段としての地位を強固にしている。
GEO衛星の役割再定義 マルチオービット時代へ
静止軌道(GEO)衛星の市場も転換期を迎えている。2024年の民間GEO注文は過去最低の6件だったが、2025年に10件へ回復。2026年9月中旬までにはさらに14件の注文が記録されている。この回復は、複数軌道を組み合わせた戦略の進化とNGSO体制の急速な拡大に伴うGEO能力への継続的需要を反映している。
ブッシュは「従来型のGEO事業モデルへの回帰ではない」と明言する。ソフトウェア定義衛星(Software-defined satellites)、より柔軟な商業的取り組み、各国主権に関わる要件、そしてマルチオービト戦略の成長が、GEOの役割を再定義しているという。衛星通信の将来は「GEOかNGSOか」という二者択一ではなく、「それぞれの異なるニーズを満たす補完的なエコシステムとして両者が機能する方向へ進む」との見通しを示している。
出典: SpaceNews
