遠い惑星の海を見つける鍵は「きらめき」—NASAの次世代望遠鏡が切り開く新たな観測戦略
これまでに5,500個以上の系外惑星が発見されており、そのうち数十個は親星のハビタブルゾーン(生命が存在できる可能性のある領域)に位置している。理論上、これらの惑星には液体の海が存在するかもしれない。しかし現在まで、他の惑星に液体の海が確実に存在することを示した観測例は一つもない。アリゾナ大学のエレノア・コーニッシュとタイラー・ロビンソンの研究者らが発表した新たな論文は、この問題を解決する独創的な手段を提案している。それは惑星の海からの「きらめき」(specular reflection、鏡面反射)を検出することだ。
水面特有の光学特性を利用した新手法
きらめきとは、物理学でスペキュラー反射と呼ばれる現象である。地球では砂浜で太陽光が水面に低角度で当たるとき、水平線が金色に輝く光景として私たちは目にしている。砂や岩、土壌といった系外惑星の主要構成物は、光を全方向に等しく散乱させるラムベルト面として作用する。一方、水はまるで鏡のように振る舞う。直上から見ると光はほぼ透過するか弱く反射するが、浅い角度で水面に当たった光は強く反射される。
この現象は理論にとどまらない。2009年には土星探査機カッシーニが、タイタンの炭化水素湖からのスペキュラー反射を検出した。数十年前には、カール・セーガンを含む研究チームがガリレオ探査機による地球フライバイの際に、私たちの海からのきらめきを観測している。系外惑星での観測はまだ実現していないが、その技術的実現可能性は既に立証されているのだ。
コーニッシュとロビンソンの研究チームは、大気現象をモデル化するツール「rfast」を改造した。コックス・マンク海洋モデル(Cox-Munk ocean model)という既存のモデルを組み込むことで、風速と波の起伏が望遠鏡に返す光にどう影響するかを反映させた。重要な発見として、比較的高いノイズレベルでも、位相角が120度を超える角度で観測すれば、海がある惑星とない惑星を区別できることが判明した。
次世代望遠鏡HWOの実現に向けた実用的な知見
120度という閾値の背景にある、もう一つの物理現象がある。この高角度において、海面をかすめた恒星光は惑星の大気を長距離に渡って通過する。この過程で青色光を散乱させるレイリー散乱が起こる。テレスコープに到達する頃には、ほとんどの青色波長が除去され、赤色が支配的となるのだ。これを「きらめきの赤化」と呼ぶ。
この成果は、特にハビタブル・ワールズ・オブザーバトリー(HWO、宇宙居住可能惑星観測所)の設計者にとって朗報である。従来の理論では、きらめきの観測は130度の位相角でのみ可能と考えられていた。位相角が大きいほど観測時に惑星が親星に接近する必要があり、親星の光を遮蔽することがHWOにおける最大の技術課題だ。観測可能な角度が10度拡大することで、設計上の余裕が生まれる。
論文は一方で、モデルの限界も指摘している。雲が最たる例だ。シミュレーションではアースライク系外惑星について50パーセントの雲被覆を想定したが、太陽系内でも全面が雲に覆われた惑星は多い。雲は海からの反射を完全に遮蔽するか、高層の巻雲のような形態では実際には海がない場所でもきらめきを模擬する光を散乱させる可能性がある。研究チームは、気体と液体の吸収特性を区別する手法など、対策が存在することも指摘しているが、光年単位の距離にある惑星の海を検出することの本質的な難しさが浮かび上がってくる。
研究の実用化に向けては、地球が三日月状に見える位相における観測データの蓄積が不可欠である。このデータは機械学習の訓練データとして、HWO科学者が得られた観測結果を正しく解釈する上で極めて重要になるとされている。
出典: Universe Today
