初期宇宙の「小さな赤い天体」から高エネルギーニュートリノが地球に到達している可能性

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が観測した、宇宙初期の謎めいた天体群が、現在の地球に到達するニュートリノの起源を説き明かす鍵になるかもしれない。京都大学の数物系専攻の大学院生・久世陸率いる国際研究チームが、このシナリオを提唱し、その可能性を数値計算で検証した。

JWSTの赤外線観測装置が宇宙初期を観測した際、多くの小さな赤い天体が見つかった。これらはビッグバンから6億年から16億年後に存在していた遠方銀河であり、「小さな赤い天体」(Little Red Dots、LRD)と愛称で呼ばれている。これまでに341個が特定されており、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡での発見後、天文学者の注目を集めている。近傍宇宙や最近の宇宙では、このような特徴を持つ銀河の例は知られていない。

研究チームは、これらの小さな赤い天体の中心に超大質量ブラックホール(SMBH)があり、それが形成直後の巨大ガス雲の直接崩壊(direct-collapse black hole)から生まれたと理論づけている。ブラックホールはガス包に取り囲まれており、この環境が高エネルギーニュートリノの生成に適していると考える。

隠された黒穴からのニュートリノ生成メカニズム

ニュートリノは電気的に中性の素粒子で、高エネルギーの陽子が周囲の光子や物質と衝突する際に発生する。もし小さな赤い天体の周囲に十分に密集したガス層があれば、ニュートリノはそこから逃げ出して、約130億年の宇宙の旅を経て地球に到達することが可能だ。

研究チームが着目したのは、ニュートリノの起源についての謎である。科学者たちは地球上で高エネルギーニュートリノを検出しているものの、全天でのエネルギー背景の発生源は未解明のままだ。興味深いことに、高エネルギーニュートリノを生成する天体源はガンマ線も放出するはずなのに、観測されるガンマ線の背景は想定より弱い。これは、ニュートリノの発生源がガンマ線を容易には逃さない隠された天体でなければならないことを示唆している。

小さな赤い天体は、黒穴から出ているジェット流がその周囲の密集したガス層に隠蔽されているシナリオに合致する。小さな赤い天体は観測されたジェット流や外向きの流出に関連する多くの放射を放出していないからである。

数値計算が示す貢献の可能性

研究チームは、小さな赤い天体の光度と数密度を用いて、全天ニュートリノ背景への寄与度を推定した。さらに粒子加速、二次粒子の生成、冷却過程に基づいて、小さな赤い天体から生成されるニュートリノのスペクトルを数値計算で評価した。

結果は、隠蔽された環境で粒子加速が起こりうるのであれば、小さな赤い天体がガンマ線を抑制しながら高エネルギーニュートリノを生成できることを示した。久世が述べたように、小さな赤い天体の中央のブラックホール周辺には、豊富な光子と密集したガスが存在するとみられ、そこで衝突が効率的に起こる可能性がある。個々の天体の直接観測は困難だが、小さな赤い天体の豊富さを考慮すれば、観測される高エネルギーニュートリノの一部の起源を説明できる初の研究だという。

今後の課題は、異なるニュートリノ「フレーバー」の比率推定と、ジェット流が密集ガス層内に隠蔽される条件の詳細な調査である。研究には京都大学のほか、ペンシルベニア州立大学マルチメッセンジャー天体物理学センター、東北大学先端分野融合センター、北京大学カブリ天文学・天体物理学研究所(KIAA-PKU)が参加した。

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出典: Universe Today