星形成の舞台裏:モノセロス領域R2で明かされたガス流の複雑な役割
恒星の誕生は、銀河全体の物理現象を左右する壮大なプロセスである。Evan Goughが2026年8月20日に報じた研究によれば、星が形成される際のガスの流れの仕組みは、従来の理解よりも複雑であることが判明した。九州大学先導物質開発研究所の助教授・黄知葉(ファン・ジヒェ)らが『The Astrophysical Journal Letters』に発表した論文「From Interfilamentary Gas to Filaments and Hubs: Gas Flows in the Monoceros R2 Hub–Filament System」は、星形成がどのような手段で駆動されるのかについて新たな光を当てている。
密度が異なるガスの流れが星形成を支える
星形成領域では、星が生まれる場所を決定する要因がガスの集積にある。従来の観測研究により、細長い構造をした高密度フィラメント(filament)に沿って流入するガスが星形成に重要な役割を果たすことが示されていた。しかし黄らの研究が示すのは、フィラメント間の低密度領域を流れるガスもまた、星形成ハブへ向かって流入しており、その寄与は無視できないという点である。
研究対象は、地球から約2700光年離れたモノセロス領域R2である。ハブ・フィラメント・システム(Hub–Filament System、HFS)と呼ばれるこの領域で、黄らはNobeyama 45m電波望遠鏡を用いて一酸化炭素の動きを追跡した。13COと呼ばれる炭素13を含む一酸化炭素が低密度ガスを、C18Oと呼ばれる酸素18を含む一酸化炭素が高密度ガスをそれぞれ示す。観測の結果、3本の密なフィラメントと3つの低密度フィラメント間領域が特定された。
星形成ハブに流れ込む二つのガス経路
これまで気付かれていなかった点は、フィラメント間の低密度ガスがハブに向かって実際に流入しているかどうか、そして密なフィラメント沿いでの質量降着率と低密度領域での降着率がどの程度異なるのかといった問題であった。黄らは今回、ESOのVISTA望遠鏡が捉えた赤外線観測データとHerschelの観測データを組み合わせることで、この疑問に答える観測証拠を得た。
研究チームの図解に示された通り、密なガスは緑の矢印でフィラメント沿いにハブへ向かい、青い矢印で表現される低密度ガスはフィラメント間の領域をより緩い速度で側方から流入し、フィラメントの供給を補充する。つまり、異なる密度を持つ二つのガス流が協働することで、星形成が持続的に進行する仕組みが明らかになったのである。
出典: Universe Today
