ジェイムズ・ウェッブが宇宙初期の超高密度星団を発見――中質量ブラックホール誕生の現場か
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が、ビッグバンからわずか460万年後の遠い銀河で、極めて高密度な星団5つを検出した。これらの星団がいま、天文学者たちの間で強い関心を集めている。それは、現在の宇宙で観測される超大質量ブラックホール(SMBH)の起源に迫る手がかりになる可能性があるためだ。
発見されたのは「Cosmic Gems」と呼ばれる重力レンズ効果で拡大された銀河の領域にある星団群である。ローマ・サピエンツァ大学のヴィオラ・ボッキらの研究チームが、天文学誌『Astronomy and Astrophysics』に発表した論文「Massive star clusters detected by JWST as natural birth places to form intermediate-mass black holes」(JWST検出の超大質量星団は中質量ブラックホール形成の自然な誕生地)で、この発見を報告している。
ブラックホールの「成長の階段」を埋める中質量ブラックホール
現代の宇宙に存在する超大質量ブラックホールは、単純な起源からは説明できない。天文物理学者たちは、「階層的ブラックホール併合フレームワーク」と呼ばれる枠組みで、その形成過程を理解している。仮説によれば、超大質量ブラックホールは恒星質量ブラックホール(質量約8~50太陽質量の星が超新星爆発や直接崩壊で形成)から始まり、何度も併合を繰り返して、数十億太陽質量にまで成長するという。
この成長過程の中間段階に位置するのが、中質量ブラックホール(IMBH)である。質量は100~100,000太陽質量の範囲にあるとされるが、その直接的な証拠は長く限定的だった。2024年の研究では、天の川銀河の外縁にある球状星団オメガ・ケンタウリの中心に、約8,200太陽質量のブラックホールが存在することが報告された。また2020年には、重力波観測により、質量85太陽質量と66太陽質量のブラックホールが併合して約142太陽質量のブラックホールになった現象が捉えられている。
しかし、これらの中質量ブラックホールは、どこで、いつ誕生したのか。特に、現在の超大質量ブラックホールの種となるような中質量ブラックホールが、宇宙最初期にどのようにして形成されたのかという問いは、謎のままだった。
宇宙初期の超高密度星団が「黒い怪物」の揺籃だった可能性
ボッキらの研究は、この謎に直接的な回答を提供している。Cosmic Gemsで発見された5つの若い超大質量星団(YMC)は、質量が100万~1000万太陽質量で、半質量半径(星団の質量の半分を含む球の半径)が0.4~15パーセク程度という極めてコンパクトな構造を持つ。こうした密度の高さは、衝突に基づくモデルによる中質量ブラックホール形成に最適な環境だという。
研究チームは、星風による質量喪失と暴走衝突(runaway collision)をベースにした数値シミュレーションを用いて、これらの星団が生成しうる中質量ブラックホールの質量を推定した。その結果、形成される中質量ブラックホールの質量は100~4,000太陽質量程度になると見積もられた。特に注目すべきは、Cosmic Gemsの星団から生じる中質量ブラックホールである。星団の半径が約1パーセクと極めてコンパクトであることで、1,600~2,700太陽質量という特に重いブラックホール種子が形成されるという。
JWSTは同じく重力レンズで拡大された「Firefly Sparkle」銀河(ビッグバンから約600万年後)からも10個の若い超大質量星団を検出している。こうした多数の発見により、宇宙最初期の高密度星団が、現代の超大質量ブラックホールへと成長する種子の生産工場だったという見方が、急速に有力になりつつある。
出典: Universe Today
