銀河群の衝突がもたらす乱流が星生成を阻害――ステファンの五重星系で日本の研究チームが詳細マップを作成
ステファンの五重星系(Stephan's Quintet)に広がる乱流が、星形成を大きく左右していることが明らかになった。大阪公立大学大学院理学研究科の山本美咲を筆頭とする日本の研究チームが、アタカマ・コンパクト・アレイ(ACA)を用いてこの銀河群の一酸化炭素(CO)観測を行い、分子ガスの構造と乱流状態を詳細にマッピングした。成果は天体物理学誌『The Astrophysical Journal』に「Molecular Gas Structure and Star Formation Diversity in Stephan's Quintet Revealed by ACA CO(1–0) Mapping」として掲載されている。
銀河相互作用による複雑な環境
ステファンの五重星系は五つの銀河の視覚的な集団として知られ、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の初期観測対象の一つになった。名称では五つの銀河とされるが、実際には四つの銀河が同一の銀河群を構成しており、残りの一つは地球から約7倍近い前景銀河である。この銀河群は過去に発見された最初のコンパクト銀河群であり、最も詳細に研究されてきた。
アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)の部分集合であるACが観測したのは、この四つの銀河メンバー内および周辺のガス分布だ。研究チームが作成した高分解能マップは、ステファンの五重星系全体の大規模(137キロパーセク×119キロパーセク)で空間分解能約5.5キロパーセクの分子ガス図像である。これまで多くの研究グループがこの領域のCOマッピングを試みているが、今回の観測結果ははるかに詳細なものとなっている。
乱流が星生成を制御する仕組み
星生成は一般的にガスが濃集している領域でより活発だと考えられてきた。しかし今回のマッピングは、乱流がその活動に重大な影響を与えることを示す。分子ガスの大部分はNGC7319銀河の円盤および銀河間領域に存在し、衝撃波フィラメントとNGC7319からの潮汐尾も含まれている。観測によると、これらの銀河のメンバー内部にはほとんどガスが存在せず、中性水素ガスは銀河外に広く分布して顕著な潮汐尾を形成している。
ガス分布は、この銀河群が進化した段階にあることを示唆している。銀河から中性水素が剥ぎ取られ、現在は円盤外に集中しており、各銀河は水素が枯渇した状態にある。重要なのは、COマップが乱流の最も活発な領域を明確に示した点だ。ガスの塊における速度分散の幅が乱流の指標となる。潮汐尾とその周辺に沿って、拡張された分子ガス成分だけでなく、速度分散を持つ四つの離散的なCO塊が検出されている。
星生成可能な分子ガスはスペクトル線観測では困難なため、天文学者は痕跡成分である一酸化炭素を代理として用いる。CO分子は巨大分子雲の体積のごくわずかを占めるにもかかわらず、雲全体に広がり、エネルギー変化に迅速に応答することから、分子水素の信頼できる指標となる。銀河群という複雑で特異な環境でのガス運動観測は、こうした基礎的な理解を深める重要な事例となる。
出典: Universe Today
