2061年のハレー彗星とのランデブー、2036年の打ち上げで実現へ――新しい軌道設計が40年ぶりの挑戦を可能に

1986年にハレー彗星が太陽に接近した際、人類は複数の探査機を送り込んだ。この時の観測団は「ハレー・アルマダ」と呼ばれ、欧州宇宙機関(ESA)のジョットや旧ソビエト連邦のベガ探査機が参加していた。しかし彗星の軌道が極めて特殊だったため、これらの探査機は数時間の短いフライバイ(接近通過)に終わり、彗星の表面についての多くの謎が未解明のままだった。

その課題を解決する道筋が見えてきた。ハリファ大学の研究者と共著者らがarXivに発表した論文が、2061年にハレー彗星と実際に会合(ランデブー)する新しいミッション計画を示している。これまでの試みとは異なり、既存技術のみを使用する現実的な軌道設計である。

極端な軌道を克服する二度の重力アシスト

ハレー彗星は逆行軌道を持ち、軌道傾斜角が162度という極度な傾きにある。この特異な軌道に追いつくには膨大なエネルギーが必要だ。それが、かつての「ハレー・アルマダ」が彗星のハロー領域で数時間の観測に留まった理由である。

研究チームが採用した戦略は、木星と土星の両方の重力を利用する二重の重力アシスト(Double Gravity-Assist)だ。従来の単一の重力アシストでは不十分だったが、この二度のアシストにより、既に実証済みの低出力ホール効果スラスタ(Hall-effect thruster)で彗星に追いつくことが可能になる。

探査機は打ち上げ時に約2000キログラムの観測機器と推進剤を搭載し、放射性同位体熱電気変換器(Radioisotope Thermal Generator、RTG)で駆動するホール効果スラスタの連続的な加速を行う。木星でのフライバイが最初の速度増加をもたらし、土星での重力アシストが彗星の高い軌道傾斜角に合わせるように軌道平面を変更する。この第二のアシストでは追加の化学燃料を消費しない。

科学観測を重視した長期滞在の実現

探査機は2060年にハレー彗星に到達する予定で、これは彗星の次の太陽最接近(近日点通過)の約1年前、火星軌道の外側での接近になる。

重要なのは、従来のフライバイではなく、彗星の近傍に数ヶ月間滞在できる点だ。彗星核が太陽への接近に伴い加熱される劇的な変化の過程を観測し、その詳細なデータを収集することが初めて可能になる。ミッション設計では科学観測用のペイロードとして750キログラムが確保されている。

実現には時間的な制約がある。最適な打ち上げ窓は2036年8月と2037年9月に限定され、ランデブーポイントに到達するまでに20年以上を要する。つまり、プロジェクト開始から打ち上げまでの間に約10年の期間しか残されていない。現在の予算制約の厳しい環境下での実行は容易ではない。ただし、ハレー彗星ほど多くの人々を夜空へと向かわせる天文現象は他にほとんどない。軌道や到来時期は既に確実に把握されている。後は人類が、この名高い彗星を長期間にわたり訪問する覚悟を決め、論文で示された青写真に従うかどうかというだけだ。

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出典: Universe Today