マンガンが宇宙の時計になる—銀河の年齢測定に新たな手法
オハイオ州立大学の天文学者らが、マンガンという身近な元素を使って銀河の進化を追跡する新しい方法を発見した。月刊王立天文学会誌(Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)に発表されたこの研究は、宇宙の経過時間を測る仕組みを大きく変える可能性を秘めている。
宇宙で最も使いにくい元素が注目される理由
マンガンは鉄族に属する比較的ありふれた元素だが、その鉄よりも100倍も少ない。従来、天文学者たちはマンガンをほとんど活用してこなかった。この元素は紫外線で明るく輝く特性があるため、地球の表面からの観測が難しく、超新星の残骸や水素電離領域(H II領域)の研究に用いられることはめったにないものだった。
しかし超新星の晩期段階ではマンガンが光を放つという基礎物理学の理論は存在していた。これまで単に誰もが、その光を科学的な計測ツールとして活用することの詳細な物理学を突き詰めていなかっただけなのだ。
超新星の種類で異なるマンガンの生成速度
マンガンの価値は、その生成過程にある。鉄より原子番号が大きい「重い」元素は、二つの種類の超新星で形成される。短命の超大質量星が爆発するII型超新星は、誕生後わずか数百万年で起こる。一方、I型超新星は、より安定した星が死去してから数十億年後に発生する。
重要な点は、I型超新星ではマンガンが極めて高速で形成されることだ。時間とともに宇宙に蓄積するマンガンが増加するにつれ、マンガンと鉄の比率は上昇を続ける。この比率を初期宇宙の銀河で測定できれば、銀河の進化と星形成の歴史を追跡するための「宇宙の時計」として機能する。
計算機が導き出した1400以上のエネルギー準位
オハイオ州立大学の研究チームは、高度な計算システムを用いてマンガンの1,421個の異なるエネルギー準位を計算した。結果を米国立標準技術研究所(NIST)が保有する原子データベースと照合したうえで、電子とマンガン原子の703通りの衝突パターンを計算。それぞれの衝突から放出される光がどのような見た目になるかを予測した。
この計算を宇宙空間の温度と密度条件に拡張することで、初期宇宙でマンガンを探索する場合に何を検出できるか、具体的なデータセットが得られた。
論文で示されたスペクトル線の一部は赤外線と近赤外線の領域にあり、この波長はジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が得意とするスペクトル領域と一致する。マンガンのデータを他の宇宙「時計」の観測値と組み合わせることで、初期宇宙の構造の年代測定がより確実になる。より高性能な次世代望遠鏡が遠い過去を覗き込むにつれて、こうした年代測定の手段はますます重要性を増していくだろう。
出典: Universe Today
