月の塵が星の歴史を記録する――隕石衝撃で「かき混ぜられた」月面の謎を解く

月面に隕石が衝突する際に起きる現象は、単に表面を掘り返すだけではない。ハワイ大学地球物理・惑星物理研究所のエミリー・コステロ率いるチームは、この隕石衝撃がもたらす「影響ガーデニング(impact gardening)」という過程を数学モデルで解き明かし、古い超新星爆発の痕跡を月の砂礫から読み取る方法を開発した。

月面は微小な隕石から大型の小惑星まで、あらゆるサイズの天体からの絶え間ない砲撃を受けている。この過程により、月の表面を覆うレゴリス(砂礫)が時間をかけて反転・混合・再分配される。単一の月面採取コアサンプルは個別の衝撃履歴の影響を受けるため、星間由来の広域的な信号と局所的なばらつきを分離するには高度な統計処理が必要となる。コステロらが開発したモデルはこの課題に対応できる。

超新星の「放射性の遺産」が月に降り積もる

超大型星が超新星爆発で生涯を終えるとき、放出される物質には星の核融合炉で生成された元素のほか、爆発時に新たに生み出された放射性同位体の多くの系列が含まれる。その中には鉄、ニッケル、亜鉛、ウラン、プルトニウム、ヨウ素、ハフニウム、キュリウムといった元素の放射性同位体が存在する。太陽系に到達したこれらの物質は、地球の海底に沈積すると同時に、月面にも落下して蓄積してきた。

地球に降り積もった星の塵は海底に埋もれることで急速に分離されてしまう。一方、月のレゴリスは80~100百万年以上の歴史を保存できる長期的な「宇宙アーカイブ」として機能するとコステロは指摘する。月面採取コアがより深い層からのサンプルを採取する際、混在する層を適切に読み解き、太陽系が銀河を通じて歩んできた歴史を再構成するには、隕石衝撃がもたらす混合現象の物理を理解することが不可欠である。

コステロが説明するモデルの複雑さは、衝撃圧密、掘削作用、放射性崩壊、宇宙風化といった複数の物理的メカニズムが同時に作用する過程を再現しなければならない点にある。数学モデルは土壌を埋める力と隕石衝撃によって掘り起こす力との競争として機能し、星の残骸の放射性崩壊を考慮しながら、エピソード的な超新星によって星塵が運ばれた時期と場所を正確にマッピングする。

アポロのサンプルで検証、未来のミッションに活かす

研究チームはアポロ・ミッションで採取された月サンプルを用いて「深さ・濃度プロファイル」を再現し、地球で「感受」された既知の超新星パルスのタイムラインと比較検討した。その結果、モデルはアポロのレゴリス試料からアイロン-60(鉄-60)の深さ・濃度プロファイルを予測できることが判明した。さらにプルトニウム-244、ヨウ素-129、ハフニウム-182、キュリウム-247といった複数の同位体についても、時間をかけて月のレゴリスに混ぜ込まれるプロファイルを予測することが可能であることが確認された。

コステロは「初めてモデル結果を同僚と共有した際、モデルと測定値の一致度の高さに驚かれた。経験的観測と物理モデルの間でこのレベルの精密度が得られることは、興奮的で注目に値する」と述べている。

NASAや中国宇宙局などが計画している今後の月面ミッションは、こうした研究に新たな転機をもたらす。採取される月面の塵サンプルが「ガーデニングモデル」と組み合わせて検討されれば、超新星の歴史について未だ明かされていない章が新たに明らかになる可能性がある。星の残骸を地球と月周辺の広大な歴史をたどる羅針盤として活用できることの美しさに、コステロは言及している。

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出典: Universe Today