上空100マイルからでも見えたのか―初期宇宙飛行士の視力実験の謎
1963年5月、マーキュリー・アトラス9号(Mercury-Atlas 9)で地球を周回していたNASA宇宙飛行士ラルフ・ゴードン・クーパー・ジュニアは、70mm(ミリメートル)カメラを手に29枚のカラー写真を撮影した。軌道上100マイル上空の窓から見えた地球の光景について、クーパーは驚くべき報告をもたらした。地上を走る車両、煙を吐く列車、家の屋根―細部まで見分けられたというのだ。
この証言は専門家たちに疑問を呼び起こした。当時の視力研究者の多くは、たとえ20/20の視力を持つ宇宙飛行士であっても、軌道高度からは辺の長さが150フィート以下の物体は明瞭に視認できないと仮定していた。クーパーが例外的な20/12の視力を持っていたとしても、米国とメキシコの国境付近で白い自動車が舞い上げた砂塵を目にしたという主張は、当時の視覚科学の常識を超えるものだった。
他の宇宙飛行士たちも同じ証言をしていた
興味深いことに、クーパーの証言は孤立した事例ではなかった。マーキュリー計画の他の宇宙飛行士たちも、地球表面の物体を驚くほど詳細に見ることができたと報告していたのだ。これらの相次ぐ主張は、NASAの関係者たちだけでなく、精神衛生の専門家たちまで巻き込み、宇宙飛行士たちの心身の状態について疑問が生じるきっかけとなった。
チャールズ・コンラッド・ジュニアとクーパーは、後年のジェミニ5号(Gemini V)ミッション時の1965年8月に、視覚能力に関する実験に参加することになる。初期の宇宙計画で報告された視力に関する現象は、単なる観測者の主観を超え、宇宙環境下での人間の感覚能力を理解するための重要な科学的課題として認識されるようになっていたのだ。
