NASAとインド宇宙研究機関(ISRO)が共同開発したNISAR衛星のL帯レーダが、南極大陸で「ハチドリ」と名付けられた新たな地形を捉えました。2026年7月22日に公開された観測データは、レーダ技術による地球観測の可能性を改めて示すとともに、極域の氷床変動の解明に大きな手がかりをもたらします。
レーダが映し出した南極の謎の地形
NISAR衛星搭載のL帯レーダが検出した「ハチドリ」と呼ばれる地形は、南極大陸の広大な氷床上で確認されました。その形状がハチドリに見えることから、研究チームが愛称をつけたもので、地表付近の構造や組成の違いを色彩で可視化した画像が公開されています。肉眼では識別困難な規模の地形変化も、電波を地表に送信して反射波を受信するレーダ方式だからこそ、雲や暗闇に左右されず観測できます。このL帯レーダは地中数メートルまで透過し、氷床内部の層構造や岩盤の特性を調査するのに特に優れています。
極域氷床研究への応用と科学的価値
南極の氷床は地球規模の気候変動を理解する上で極めて重要です。氷床の厚さ、流動速度、内部構造の把握は、海面上昇予測の精度向上に直結します。NISAR衛星のレーダ観測により、従来の測量技術では検出困難だった氷床下の地形やその変化を継続的に監視することが可能になります。「ハチドリ」の正体は、氷床下の基盤岩盤の隆起、氷河谷の分岐、あるいは地熱活動に関連する構造と推定されており、今後の詳細解析で南極大陸の地質学的特性が一層明らかになるでしょう。
宇宙技術の地球観測への貢献
NISAR衛星は2024年に打ち上げられ、地球規模の地盤沈下、火山活動、森林変化などを高精度で監視するために設計されました。L帯とS帯(S-band)の2つのレーダを搭載し、相互干渉法によって数センチメートルの精度で地表変動を測定できます。南極のような極限環境での観測成功は、プロジェクトの技術的成熟度を示す成果です。今後のデータ解析による地球規模の地殻変動マップ作成が期待されます。