NASAが開発を進めるローマン宇宙望遠鏡(Roman Space Telescope)は、遠い宇宙に存在する古い時代のブラックホールを、それらが恒星を吸収する様子を観測することで発見する計画を進めています。この革新的なアプローチにより、宇宙初期に形成されたブラックホールの謎解きが期待されています。
恒星の食べ方から見えるブラックホール
ブラックホールが周囲の恒星やガスを引き込む現象は「吸積(きゅうせき)」と呼ばれます。この過程で放出される光は非常に明るく、赤外線領域でも検出可能です。ローマン宇宙望遠鏡の高感度赤外線センサーはこうした微かな信号をとらえることができるため、遠方のブラックホール周辺で起こっている吸積現象を効率的に捉えられるとみられます。恒星が引き裂かれるときに放つ独特の光のシグネチャーを追跡することで、従来の方法では見つけにくい古いブラックホールの位置と質量を特定できるようになります。
宇宙初期の謎に迫る観測
宇宙が誕生してからわずか数億年という極めて初期の段階で、既に太陽の数百万倍から数十億倍もの質量を持つ超大質量ブラックホールが存在していたことが知られています。しかし従来の理論では、こうした巨大なブラックホールがこんなに短期間に形成されることは難しいとされてきました。ローマン宇宙望遠鏡による広視野での系統的な調査は、宇宙初期のブラックホール成長プロセスを解明する重要な手がかりになるでしょう。本観測を通じて、現在の標準的なブラックホール形成論の修正が必要になる可能性もあります。
将来の宇宙科学へのインパクト
2027年ごろの打ち上げが予定されているローマン宇宙望遠鏡は、赤外線観測能力においてジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を補完する役割を担うことになります。広大な視野で多数の天体を同時に観測する能力を生かし、ブラックホール以外の高速で移動する天体や遠方の銀河についても新たな発見がもたらされると期待されています。日本の研究機関も国際協力を通じてこのプロジェクトに参加する見通しで、宇宙物理学の最前線における日本の貢献がさらに拡大していくでしょう。