音楽記号のような謎の電波天体「トレブル・クレフ」、超大質量ブラックホールの痕跡か
200万光年の広がりをもつ異質な電波構造が、音楽の高音部記号に似ていることから「トレブル・クレフ」と呼ばれる天体がある。VLSS J0318.9+5755という正式名称を持つこの天体は、私たちの銀河系による可視光の遮蔽により、その姿を直接見ることが難しい。2004年の観測当初は正体不明のままだったが、最近になってチャンドラX線観測衛星とeROSITAの観測データが新たな仮説をもたらした。
ブラックホールの噴出物が秘めた物語
トレブル・クレフの中心部に存在する帯電粒子の雲は、かつてある銀河の中心に位置していた超大質量ブラックホールから放出されたものと考えられている。これらの粒子から発せられていた電波は時間とともに減衰していくはずだった。しかし天体系の衝突という劇的な現象がこの天体に二度目の輝きをもたらしたと推定されている。二つの銀河団が衝突した際に生じた衝撃波が、すでに沈黙していた粒子の雲に再び活力を与え、電波放射を復活させたという仮説だ。
複合観測が浮かぶ二つの光
今回公開された画像はX線とラジオ波の複合観測の成果である。NASA/CXC(ナサ・チャンドラX線天文台)傘下のINAF-IRA、およびA. Bottonらによるチャンドラの観測データが青色で表現され、一方のASTRONLOFARによる電波放射は赤色で示されている。赤外線データはUKIDSS–GPSから得られている。このように異なる波長域での観測を組み合わせることで、単一の波長では見落とされやすい天体の構造が明らかになる。
トレブル・クレフのような異質な天体は、銀河団全体がどのように相互作用し、宇宙がいかに進化してきたのかについて、従来の理論では予想されない手がかりをもたらしている。
