宇宙最古の星が秘めた「ストロンチウムの謎」、地球の実験室が解く

スマートフォンの金も骨のカルシウムも、もともとは星の中で作られた。だが数十年間、天文学者たちを悩ませてきた元素がある。花火を赤く輝かせ、暗闇で発光する塗料に使われるストロンチウムだ。ミシガン州立大学の大学院生キャリー・M・ハリスを筆頭とする大規模な研究チームが、ネイチャー・コミュニケーションズ・フィジックスに発表した論文は、この長年の謎を解く鍵となる。その答えを導き出したのは、地上の精密な実験装置だった。

古い星で「理論」が外れた理由

宇宙初期に誕生した炭素強化金属欠乏星(CEMP星)を調べるようになると、天文学者たちは予想外の事態に直面した。ヘリウムより重い全ての元素を「金属」と呼ぶ宇宙物理学では、これら重い元素は二つの経路で生成されると考えられていた。衰退する星の中で起こる遅い「s過程」と、超新星爆発のような現象における速い「r過程」である。ところが古い星の観測データを見ると、重い元素の比率が両方の過程ではうまく説明できないことが判明した。そこで第三の経路「i過程」(中間の中性子捕獲過程)が提唱されたのだ。

ほぼ全ての古い星でi過程の理論が観測と一致した。しかし一つだけ例外があった。ストロンチウムの出現頻度が、シミュレーションよりもはるかに高かったのである。

クリプトン88の「正体」を突き止める

犯人はクリプトン88だった。この極度に放射性の高い元素は、半減期がわずか2.8時間という短命の核種だ。その存在期間中、クリプトン88は二つの道のどちらかを進む。一つは中性子を吸収してクリプトン89となり、最終的にイットリウム89のような重い元素に崩壊する経路。もう一つは中性子を吸収しない場合、ベータ崩壊でルビジウム88になり、すぐさまストロンチウム88へと変わる経路だ。問題は、科学者たちがクリプトン88の中性子吸収効率を知らなかった点である。モデル計算ではただ推測値を使っていたが、観測結果から見ると、その推測が外れていた可能性が高かった。

だが半減期わずか数時間の元素の中性子吸収率をどうやって測定するのか。理論上、クリプトン88を集めて中性子を浴びせれば測定できるはずだが、研究チームはより優雅な手法を選んだ。

アルゴンヌ国立研究所のカリフォルニウム希少同位体増殖改良施設(CARIBU)を使用し、クリプトン88ではなく臭素89に中性子を照射したのだ。臭素89の半減期はわずか4.357秒だが、これはクリプトン89へと崩壊する。この兄弟の核を調べることで、兄に当たるクリプトン88の性質を推測できるという仕組みだった。

サンミング・ナイ(SuN)検出器と呼ばれる高度に専門化した装置に試料を置き、新たに生成されたクリプトン89が冷却される際に放出するガンマ線を観測。そこから「核レベル密度」と「ガンマ線強度関数」という二つの極めて重要な値を抽出した。これらの数値を手に入れた研究チームは、数学的にクリプトン88の中性子捕獲率を逆算することに成功した。

その新しい実験値をCEMP星の同位体比計算モデルに組み込むと、結果は驚くほど合致した。ストロンチウムの量が大幅に増え、イットリウムとの比率もほぼ完璧に一致したのだ。地球の精密な実験装置が、何十年間も天文学者たちを困惑させてきた宇宙の謎を解いた瞬間だった。

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出典: Universe Today