銀河系の円盤、106億年前に急速に薄くなった——新研究が謎の形成過程を解明
銀河系の円盤がいつ、どのように形成されたのかという天文学の長年の疑問に、新たな答えが示された。スペイン領カナリア天文研究所(IAC)の博士課程研究員デイビッド・ミラベルらが率いる研究チームが、《The Astrophysical Journal Letters》に発表した論文「A Two-stage Settling of the Milky Way Disk Revealed by Precise ChronoGal Ages」で、銀河系円盤の成長過程が二段階の異なるプロセスをたどったことを明らかにした。この成果は、ガイア宇宙探査機(Gaia)のデータリリース3(DR3)(2022年6月公開)を基に、色等級図フィッティングという手法を用いて恒星の年代と金属量の分布を詳細に分析したものだ。
厚い円盤から薄い円盤へ、106億年前の劇的な転換点
銀河系の円盤は、若い恒星が誕生する「薄い円盤」と、古い恒星ばかりが存在する「厚い円盤」の二層構造をしている。薄い円盤は金属量が豊富で螺旋腕を含み、新しい世代の星が次々と生まれている。一方の厚い円盤は拡散した構造をしており、ほぼ新星が形成されず、古い恒星の「化石記録」とも呼ばれている。
この二つの円盤がなぜこのような異なる性質を持つのかを理解するため、研究者らは恒星の正確な年代測定に取り組んできた。ミラベルらの論文では、「異なる年代と金属量を持つ銀河円盤の恒星の空間分布は、その動的進化の歴史と形成経路を記録している」と指摘している。
宇宙の初期段階では、銀河系のガスはより乱流的で、銀河全体が膨らんだ状態で存在していた。この時期、恒星たちは厚い円盤の軌道上に誕生していた。やがてガスが静穏化し、冷却が進むにつれ、銀河は垂直方向に収縮し、厚い円盤の内側に薄い円盤が形成されていったと考えられている。
重要なのは、約106億8500万年前(10.85 Gyr ago)を境に、この過程が劇的に変わったという点だ。研究チームによれば、この時期を前後で垂直方向のスケール高さの減少率が大きく変わったという。106億8500万年前より以前の時期には、円盤が急速に薄くなっていった。わずか20億年の間に、厚さが約4100光年から約1600光年へと縮小している。その後の進化は一転して緩やかになり、最終的に約400光年の厚さにまで薄くなっていったのだ。
謎解きを支えたガイアデータの精密測定
これまで、円盤形成の過程については複数の説が競合してきた。一つは、薄い円盤で生まれた恒星がガス雲や螺旋腕、銀河中心のバーとの衝突によって散乱され、円盤面から離脱するという動力学的な説。もう一つは、内側の円盤で星が形成されるとき、親となるガスがますます薄い円盤へと沈殿していき、世代を重ねるごとに薄い層で新星が誕生するという説だ。
この競合する説を区別する鍵は、個々の恒星の年代の正確な測定にあった。特に最も古い恒星について信頼できる年代データを得ることが大きな課題だったが、ガイアデータリリース3による色等級図フィッティング技術がこの問題を解決に導いた。研究論文では「大規模で代表的な恒星サンプルについて正確な年代を得られなかったことが、これまで銀河円盤の垂直構造を説明する形成シナリオを確実に区別するうえでの障壁となってきた」と述べている。
106億8500万年前の転換点の存在と、その前後での大きな速度変化という結果は、銀河系の円盤が単一のプロセスではなく、二つの異なる段階を経て形成されたことを強く示唆している。
出典: Universe Today
