ヒマワリの螺旋模様が電波望遠鏡には「完璧」ではなかった理由
自然界の構造を工学に応用するのは科学者の常套手段だが、時に予想外の障害が生じる。スクエア・キロメートル・アレイ(SKA)をオーストラリアで建設する国際チームが直面したのが、そうした事態だ。ヒマワリの種の配列に見られるフォーゲル螺旋という数学的に最適化された配置を、アンテナ群のレイアウトに採用したところ、特定の周波数で深刻な感度低下が起きることが判明したのである。
巨大な電波望遠鏡で何が起きたのか
SKAのオーストラリア分施設「SKA-Low」は、50~350メガヘルツの低い周波数帯を観測する予定だ。512の円形ステーション、各ステーションに256個の「SKALA4.1」と呼ぶアンテナを詰め込み、75平方キロメートルにわたってオーストラリアの奥地に配置される。総数は13万1000個を超す個別アンテナだ。
こうした膨大な数の装置を本格運用前に検証するため、チームは複数のテストベッドを実施した。CSIROマーチソン電波天文台のイニャリマンハ・イルガリ・ブンダラに設置された施設である。
当初の第2世代テスト「アパーチャー・アレイ・ベリフィケーション・システム2(AAVS2)」では、256個のアンテナを準無作為配置した。直線的に整列させるとグレーティング・ローブという偽の信号パターンが生じるためだ。だが無作為性もまた問題を招いた。偶然の配置で複数のアンテナが近接し、55メガヘルツと78メガヘルツの周波数でアンテナ間の共振が発生し、データの質が損なわれたのだ。
自然の最適設計が隠していた落とし穴
このため2023年に実施した第3世代テスト「AAVS3」では戦略を転換し、フォーゲル螺旋を採用した。理論上、この配置はどのアンテナも密集せず、グレーティング・ローブも避けられる理想形のはずだった。
ところが構築段階のシミュレーションで、天頂方向(銀河系が時折通る領域)の125メガヘルツで感度が大幅に低下する予測が浮上した。実際のテストでもこの現象は確認された。調査の結果、犯人は意外なほどシンプルだった。AAVS3のアンテナ間の距離を分析すると、2.4メートルという特定の間隔が何度も繰り返されていたのだ。この距離は、125メガヘルツの電波の波長と正確に一致する。上空から直下する信号を受けた際、この間隔を持つアンテナペアが干渉を起こすメカニズムとなっていたわけである。
フォーゲル螺旋は自然界で完璧な解を与えるが、それが工学的応用でも万能とは限らないことを今回の結果は示している。Journal of Astronomical Telescopes, Instruments, and Systems誌に発表されたこの研究は、自然に学びつつも、人間の目的に合わせて修正を加える必要性を浮き彫りにしている。
出典: Universe Today
