超新星の「偽物」の正体は連星系の物質降着だった
太陽の33倍もの質量を持つ超大質量星AT 2016bluが、過去10年間にわたり天文学者たちを惑わせていた。2012年の発見以来、この星は27回もの周期的な爆発を繰り返してきたため、間もなく超新星爆発を起こすのではないかと考えられていた。しかし最新の研究により、これらの爆発の正体は超新星の前兆ではなく、まったく別の現象であることが判明した。AT 2016bluは「超新星偽装天体(supernova impostor)」と呼ばれるようになり、バイナリ連星系における物質降着が爆発の原因であることが明らかになったのだ。
X線観測が証拠をもたらした
バージニア大学の天文学者モジガン・アグハハンロー氏が率いる研究チームは、新たなX線観測データと過去数十年間に取得されていた偶然のX線観測を組み合わせ、AT 2016bluの謎を解明した。特に重要だったのは、2026年3月のピーク爆発時にチャンドラX線望遠鏡による「機会観測(Target of Opportunity)」を実現したことだ。アグハハンロー氏と研究チームは、約113日周期で繰り返される爆発のタイミングを予測することに成功していたため、次の爆発がいつ起こるかを正確に知ることができた。その予測に基づき、複数の天文台の天文学者と30人を超える市民天文学者による観測ネットワークを構築し、チャンドラに観測を指示したのだ。
チャンドラは爆発中のX線源を検出した。一方、2001年から2002年にかけて偶然に取得されていた過去のチャンドラ観測データには、X線は記録されていなかった。この対比こそが、AT 2016bluの正体を示す決定的な証拠となった。
コンパクト天体との相互作用で爆発が起きている
バイナリ連星系において、星が伴星から物質を吸収する際にX線が放出される。チャンドラが観測した爆発時のX線の光度から、研究チームは物質降着率を計算できた。その結果は、コンパクト天体(ブラックホールまたは中性子星)の存在と矛盾しない値であった。この発見により、AT 2016bluは金色変光星(luminous blue variable)とコンパクト天体からなる高質量X線連星(high-mass X-ray binary)として分類された。
AT 2016bluは生きている星でありながら、その伴星は死んだ天体だ。生きた星が徐々に質量を失い、死んだ星がそれを吸収する関係が続いている。軌道が物質移動の条件を満たすたびに、このシステムはX線で明るく輝くのだ。アグハハンロー氏は「恒星が死ぬ前に何をしているのかを、最前列で見ているようなものだ」とコメントしている。
この研究結果は『アストロフィジカル・ジャーナル』(The Astrophysical Journal)に掲載予定であり、すでにarxiv.orgで利用可能となっている。アグハハンロー氏は2023年と2025年にもAT 2016bluに関する論文を発表しており、この連星系の正体を段階的に解明してきた。
出典: Universe Today
