地球外生命探査の最前線 ハビタブル・ワールズ・オブザーバトリーが挑む10億倍の光の差
次世代宇宙望遠鏡の開発競争は新たな段階へ進む。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の後継機として計画されている「ハビタブル・ワールズ・オブザーバトリー」(HWO)は、宇宙全体を広く観測する汎用型ではなく、生命の痕跡を持つ系外惑星を探すことに特化した「ハンター」だ。その目標は、生命を維持できる可能性のある世界を少なくとも25個発見し、直接撮像することにある。
この野心的な計画の実現には、前代未聞の技術的課題が立ちはだかっている。太陽型の恒星の周りにある地球サイズの惑星を直接撮像するには、恒星の光の強さから10億倍も暗い惑星の光を検出しなければならない。カリフォルニアのビーチに立ち、日本の灯台の隣で擦られた1本のマッチを見つけるのと同じレベルの困難さである。HWOがこの課題に立ち向かう主要な武器が、コロナグラフ(coronagraph)と呼ばれる装置だ。
極限の精度を求める光学技術
コロナグラフの仕組みは単純に聞こえる。親星の光を遮りながら、その周辺にある惑星を観測するための光学装置にすぎない。だが実現には、ほぼ不可能に近い精密性が要求される。光の波動性を利用した複数の形状化されたマスクを組み合わせることで、星光を自身と干渉させ、まさに惑星の光が漏れ出ている場所で相殺させるのだ。これにより、惑星の反射光を純粋な形で直接撮像できる。
この精度を実現するためには、宇宙空間で漂うHWOの鏡が、温度変化や装置内の振動にさらされながらも、ピコメートル(1兆分の1メートル)の範囲内に形状を保つ必要がある。大陸米国サイズまで拡大したHWOの鏡を安定させることは、その全表面を人間の毛髪の幅以下の精度で平坦に保つのに匹敵する。私たちは現在、これをいかにして実現するのかをまだ知らない。HWOの打ち上げが2040年代以降とされるのは、この工学上の困難が世代規模の課題だからだ。
データから生命の証拠を読み解く困難
技術的な課題と同様に深刻なのは、理論面での問題である。たとえ完璧なデータを得たとしても、スペクトル分析から大気中の各ガスの含有量を読み解く段階で壁に直面する。この作業には、実験室での測定と理論計算から構築された参照テーブルが不可欠だ。メタンが3.3マイクロメートルの波長でどれだけ光を吸収するか、何度の温度で、どの程度の気圧で、他のどのガスと混在しているときに、といった情報が網羅されている必要がある。これらを「不透明度モデル」(opacity model)と呼ぶ。
実験室での参照データは、各成分を個別に、室温で測定したものにすぎない。一方、実際の系外惑星の大気は冷却され、複雑に混合された多数のガスが共存している。レシピ本が正しくても、実際に口にした飲み物はその本が予想しなかった複合的な味わいを持つ。ジンとウォッカの違いさえ判別できない状況に直面しうるのだ。生命探査は、望遠鏡の性能向上だけでは解決しない、本質的に難しい問題なのである。
出典: Universe Today
