ゲーム理論が切り開く宇宙人探査――SETIが「いつ」観測するかに着目
宇宙人からの信号を探す際、従来は「どこを見るか」が最大の課題とされてきた。だが地球外知的生命探査(SETI)の研究者たちは、むしろ「いつ見るか」の方が重要ではないかという仮説を打ち出した。この新しい観測戦略は、ゲーム理論の概念を応用して立案されている。
SETIはこの新プロジェクトについての論文「A Technosignature Survey Of The Anti-Solar Point: The SETI Institute's Largest-Ever Campaign With The Allen Telescope Array」を、第77回国際宇宙会議で発表した。論文の著者はオックスフォード大学のBreakthrough Listenに属するテクノシグネチャー研究者のイザベル・ゲラード(Isabel Gerrard)と、SETI Institute研究科学者のソフィア・Z・シェイク(Sofia Z. Sheikh)。シェイクは次のように述べている。「SETIにおける課題は、単に望遠鏡をどこに向けるかではなく、別の文明が信号を送信する場所と時期を予測することなのです」。
時間座標を変える「反太陽点」への着目
新たな探査は、Hat Creek Radio Observatoryに設置されているAllen Telescope Array(ATA)という42本の電波望遠鏡を用いる。その対象は「反太陽点」(Anti-Solar Point)と呼ばれる特殊な空間座標だ。
反太陽点とは、太陽から地球を通る直線の延長線上、太陽の正反対側に位置する点を指す。この点は地球が太陽を周回するにつれて座標が変わっていく抽象的な存在である。固定された物体ではなく、時間とともに移動する概念的な点だ。
この観測戦略がユニークなのは、ゲーム理論における「シェリング・ポイント」(Schelling Point、焦点ともいう)という概念を応用している点にある。ゲーム理論では、二者が事前の通信をせずとも、共通の理解に基づいて同じ選択に自然と到達する地点をシェリング・ポイントと呼ぶ。
宇宙人も地球も選ぶはずの「目印」
著者らは論文で次のように記している。「もし地外知的存在(ETA)がシェリング・ポイントの共通理解を持つなら、両者は通信なしに同じ場所で信号の送受信を行うだろう」。
その根拠となるのが、外惑星探索で用いられるトランジット法(transit method)という観測手法についての共通認識だ。ETAも人類と同じくこの方法を用いて生命の有無を判定しているとすれば、太陽の向こう側から見た地球は太陽の前を横切る(トランジットする)。この瞬間、地球は太陽系外惑星の発見対象として識別される。
反太陽点は、宇宙のどこかにいる知的生命体と人類が、言葉を交わさずとも相互に通信の場所と時期を特定できるシェリング・ポイントとなり得る。地球がその軌道上で太陽の前を横切るたびに、反太陽点からの観察者は毎年一度、地球がハビタブルゾーン内で太陽をトランジットするのを検出できるのだ。
出典: Universe Today
