月面基地建設の最適地選定をAIが支援 オハイオ州立大学が新モデル開発
オハイオ州立大学の研究チームが、月面や火星における人類の基地建設に向けた最適な着陸地点の選定を支援する人工知能(AI)モデルを開発した。このモデルは「LUMINA」と名付けられ、軌道画像だけでなく地形・地質・表面特性など複数のデータセットを統合し、任務の成功と有効性を最大化できる着陸地点を特定する能力を備えている。
アメリカ天文学会の惑星科学部門第58回年次会議(DPS 58)で発表されたこの研究には、土木環境測地工学専攻の博士課程学生であり筆頭著者のゴクセ・イナル氏が携わった。「将来のミッションが必要とする膨大な数の画像とデータセットを分析するうえで、AIシステムは宇宙探査にとって不可欠な道具になるだろう」とイナル氏は述べている。
水氷と科学的価値を総合評価
LUMINAは単なる軌道画像の解析にとどまらない。月面の地形・地質学的特性、潜在的な科学的価値、さらに候補地点同士の比較を含む多層的なデータを処理することで、安全な着陸地点を特定する。特に水氷などの主要資源に焦点を当てながら、人類が月面に定住し科学活動を展開するための理想的な場所を導き出す仕組みだ。
研究チームはLUMINAの応用範囲を月だけに限定していない。火星を含む他の天体へも展開可能と考えており、月から火星へという段階的な人類の活動拡大を支援するツールとしての役割を見据えている。
LUMINAの開発基盤となったのは、同じ研究グループによる先行研究「Large Language-and-Vision Assistant for Lunar Exploration(LLaVA-LE)」である。このモデルは月面の軌道画像を分析・解釈する能力を実証済みで、2026年6月に開催されたCVPR2026 AI4Space Workshopで発表され、現在はGitHubで公開されている。
NASAのアルテミス計画と連動
NASAは2028年にアポロ17号以来となる宇宙飛行士の月面着陸を計画しており、その後は恒久的な人類の月面基地確立を目指している。電力システム・輸送・生命維持・原位置資源利用(ISRU)など複数の技術開発を並行して進める「Moon to Mars Architecture」という戦略的枠組みのなかで、LUMINAのような支援ツールが活躍する場がある。
ISRUは現地の資源を活用して乗組員の生存と活動を支える技術で、月の水氷から飲料水・燃料・酸素を得たり、月のレゴリス(表土)を植物栽培や建設に利用したりすることで、地球からの補給に頼らない自給自足体制の構築を目指している。イナル氏は「NASAのアルテミス計画は我々の研究にとって重要な機会であり、新しい月面データが利用可能になれば、我々のようなシステムを改善し、将来の任務計画をより的確に支援できる」と述べた。
出典: Universe Today
