太陽の「プラズマジェット」は見かけの産物だった コンピュータシミュレーションで謎を解明
太陽の大気現象として知られる「スピキュール」が、実は個別の噴出現象ではなく、複雑な三次元構造による光学的な錯覚であることが明らかになった。ニューカッスル大学、インド天体物理学研究所、シェフィールド大学の研究チームが発表した論文によるもので、従来の観測理解を覆す発見となっている。
スピキュールは太陽の下部大気から秒速数十キロメートルで立ち上るプラズマの噴流で、数分後に表面に向かって崩壊する。太陽の縁では数万個、全球表面では数百万個が常に存在すると考えられている。これまで科学者らは、個々のスピキュールを小型プラズマ竜巻のような独立した現象として扱ってきた。
しかし研究チームは、スピキュールが実は磁力線に沿って折り畳まれた巨大なプラズマの「カーテン」であることを示す証拠を提示した。太陽の縁から観測する際、このカーテンの重なった褶曲が、あたかも個別の回転するジェットのように見えるというのだ。
音波とプラズマの物理から導き出された新解釈
この結論に至った手法は、従来の観測データではなく、コンピュータシミュレーションである。研究チームはPencil Codeと呼ばれるシミュレーションツールを用い、太陽表面下の対流層から下部コロナまで、磁流体力学の挙動を詳細にモデル化した。
シミュレーション環境で最も注目された現象は、太陽表面下の粒状構造(グラニュール)が大気に与える「音波のような打撃」である。この打撃は音波に相当する波を大気上空へ送り出す。だが太陽の場合、これは従来の音波ではなく、磁場に沿って伝播する磁流体力学波として作用する。高さが増すにつれて周囲のガス密度が低下し、波は巨大なバウショック(弓状衝撃波)へと成長する。衝撃波が破裂すると、プラズマが太陽の大気圏深く数千キロメートルの高さまで吹き上げられ、アコーディオンのように折り畳まれたカーテン構造を形成する。
シミュレーションの重要な発見は、人工衛星が実際に何を観測しているかをモデルで再現できたことだ。真上から見ると、波によって吹き上げられたプラズマは折り畳まれたシート状だが、太陽の縁から観測するとこれらの褶曲が統合され、一本の線すなわちスピキュールのように映る。スピキュールの「運動」は、カーテンが時間とともに揺れたり巻いたりする現象として説明できる。
新たな現象「コロナルスウォーリングコンダクト」の発見
シミュレーション結果の検証には、Interface Region Imaging Spectrograph(IRIS)とHinode衛星の観測データを活用した。Hinode衛星は2006年に打ち上げられ、2013年にはIRISが運用を開始している。両者のデータから得られたスピキュール特有の不可解な運動が、モデルの予測と驚くほど一致したことで、理論の妥当性が裏付けられた。
興味深いことに、研究チームが自動渦検出アルゴリズムをモデルに適用した結果、スピキュールに似ているが本質的に異なる現象を発見した。それは数百キロメートル規模の巨大な回転プラズマの柱で、秒速20キロメートルに達する回転速度を持つ。研究チームはこれをCoronal Swirling Conduits(CoSCo)と命名した。
CoSCoには二つのタイプが存在する。ひとつは太陽大気中で磁場が相互に作用してエネルギーを放出する現象に関連する。もうひとつはスピキュールカーテンの縁部で形成され、周囲の希薄領域との密度差に由来する。この発見は、太陽コロナが表面より極めて高温である「コロナ加熱の謎」を理解するうえで、新たな視点をもたらす可能性を秘めている。
出典: Universe Today
