月面基地の断熱材に「層状マイラー」 ペンシルベニア大学チームが耐久性を実証
月面での長期滞在を実現させるには、極限環境での温度管理が不可欠だ。ペンシルベニア大学工学部の研究チームが、層状に積層したマイラー(Mylar)シートが月面拠点の断熱材として機能することを実証し、その成果を『ACS Applied Materials & Interfaces』に発表した。月の過酷な環境で人類が生き延びるための材料開発は、これまで知見が限定的だったが、今回の研究はその空白を埋める一歩となる可能性がある。
予想を覆した「中程度から厚めの層」の性能
研究チームは異なる厚さのマイラーシートを組み合わせて実験を行った。厚さ2.5マイクロメートル、5マイクロメートル、12.5マイクロメートルの3種類を用意し、それぞれ異なる層密度(1ミリメートルあたり80層から400層)で積層した。具体的には、最も薄い2.5マイクロメートルは400層、中程度の5マイクロメートルは200層、最厚の12.5マイクロメートルは80層の構成である。
真空環境と広範な温度条件下で試験を実施した結果、興味深い発見があった。研究チームは当初、最も薄い層が最良の性能を示すと予想していたが、実際には中程度から厚めの積層構造が優れた断熱性を示したのだ。薄い層に含まれる微粒子は接触度が高く、熱をより多く伝導させてしまう。一方、中程度から厚めの層では微粒子同士の接触が少なくなり、より高い断熱効果が得られるという。さらに研究チームを驚かせたのは、これらの積層体の耐久性だ。指の爪程度の面積に200ポンドの圧力を加えるなど厳しい条件下でも、想定以上の復元力を保つことが確認された。
月面での「小さな事故」にも耐える必要性
ペンシルベニア大学機械工学・応用力学部のイゴール・バーガティン准教授は、実用化の視点から重要な指摘をしている。「これらの積層体を月面基地の断熱に使用できますが、宇宙飛行士は必然的に物にぶつかるような小さな事故が起きる」と述べ、「月での長期滞水を考えるとき、十分な耐久性を持つ素材が重要だ」と強調した。
月面の環境は地球とは全く異なる。月は1日が地球の29.5日に相当し、そのうち半分は継続的な昼間、残り半分は継続的な夜間である。日中の表面温度は摂氏70度から127度に達する一方、日中でも日が当たらない場所では摂氏マイナス238度からマイナス247度まで低下する。これほどの極端な温度変動に耐えながら、長期間の使用に耐えうる材料開発こそが、NASAが掲げる月面への恒久的な人類の足がかり確立に向けた重要な課題となっている。
出典: Universe Today
