古代の雨が握るカギ 火星での生命誕生地を探る新しい地図

東京科学大学率いる国際研究チームが、35~41億年前の古火星に降り注いだ雨がホルムアルデヒド(H₂CO)という有機分子をどこに運んだかを示す地球規模の地図を作成した。この分子は生命誕生に欠かせない前駆物質であり、今後の火星探査ミッションで生命の痕跡を探す指針となる可能性がある。

太古の火星は生命に満ちた環境だった

現在の火星は冷たく乾燥した惑星だが、ノアキス紀からヘスペリア紀にかけた約35~41億年前は温暖で湿潤だった。この仮説は初期のロボット探査機による観測から浮上したが、バイキング1号・2号、キュリオシティ、パーサヴィアランスといった着陸機やローバーの到着によって確実になった。

こうした気候条件の下で、微生物のような生命が存在した可能性があった。東京科学大学の惑星科学者・小山峻護博士と東北大学の研究チーム、さらに東京大学先端科学技術研究センター、ワシントン大学地球宇宙科学科、ベルギー王立宇宙空気圏研究所(BIRA-IASB)の研究者らが協力し、この疑問に答えるべく研究に取り組んだ。研究成果は査読誌『惑星科学ジャーナル』に掲載された。

ホルムアルデヒドが示す生命化学の舞台

ホルムアルデヒドは火星の大気中で形成され、水と結合することで糖類、アミノ酸、その他の複雑な有機分子を生み出す化学反応の触媒となる。これらは生命そのものへと発展する可能性がある。研究チームが残された問題は、古火星のどの場所にこの分子が到達したのかという点だった。

研究者らはノアキス紀末からヘスペリア紀初期の環境をコンピュータで再現した。気温、水蒸気、大気圧、紫外線がホルムアルデヒドの形成にどう影響するかを調べた結果、火星大気中の紫外線によって水が化学的に分解され、ホルムアルデヒド形成に必要な活性水素が放出されていたことが判明した。この分子は雨として地表に降り注いだとみられる。

水が形成と分布の両方に関わることから、古火星の水循環がホルムアルデヒドの蓄積場所を決定していた可能性がある。研究者らは火星の古代地質データをこの理論と照らし合わせ、ホルムアルデヒドが豊富だった地域を特定した。特にタルシス山地とエリシウム地域といった山岳部は、全球平均の約10倍の量を受け取っていたという。

小山博士は「ローバーの調査結果と私たちの地図を比較することで、ホルムアルデヒド豊富地域が初期生命化学に適していたかどうかを検証できます。今後の観測がこの関連性を確認すれば、将来の火星ミッションの着陸地点選定に役立つ重要な資料になるでしょう」と指摘している。

火星表面には今なお古代の川床が痕跡として残されており、ここが生命探査の最重要地帯として注視されている。

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出典: Universe Today