太陽の”見えない高速波動”をとらえた Solar Orbiter、従来観測の4倍以上の磁気波を検出

太陽の極域で発生する磁気波の実態が、従来想定されていたものより桁違いに大きいことが明らかになった。北京大学のガオ・ユーハン博士とティエン・フイ教授の研究チームが、Solar Orbiter(太陽周回衛星)の観測データを用いて検出した成果で、学術誌『National Science Review』に発表されている。

太陽の両極域には「polar coronal holes(極域コロナホール)」と呼ばれる領域が存在する。ここから放出される高速太陽風は秒速数百キロメートルに達するが、どのようなメカニズムで粒子がそこまで加速されるのかは長年の謎だった。研究チームが今回明らかにしたのは、この領域で発生する高周波の磁気波動が、従来の観測機器では検出されていなかった可能性である。

観測能力の向上が呼び起こした「見落とし」の発見

鍵となったのが観測機器の性能差だ。NASAの Solar Dynamics Observatory(太陽動力学観測衛星、SDO)は12秒間隔で撮影し、1ピクセルあたり約1,100キロメートルの空間解像度を持つ。一方、Solar OrbiterのExtreme Ultraviolet Imager(EUI、極紫外線撮像装置)は5秒間隔での撮像が可能で、1ピクセルあたり420キロメートルと空間解像度は従来の2倍以上、撮影速度も2倍となっている。

2021年9月のデータを両装置で解析し、Northumbria University Wave Tracking(NUWT)というプログラムで磁気波を自動追跡した結果、太陽北極から放出される光線状の磁気構造「solar plumes(太陽プリューム)」で大きな違いが生じた。SDOが検出した波動現象は560例に対し、EUIは2,318例と4倍を超えた。

エネルギー密度で従来推定の2.6倍、太陽風加速の鍵

検出数の差は単なる量的増加ではない。EUIで捉えた波動の38パーセントは波長が100秒以下の高周波であったのに対し、SDOで同周波数帯だったのはわずか9パーセント。さらに重要なのは速度である。プラズマの移動速度はSDOが平均秒速9.9キロメートルだったのに比べ、EUIは秒速15.4キロメートルを記録した。

エネルギーは速度に比例するため、こうした高速波動が運ぶ電力は大きくなる。研究チームの計算では、従来の推定値と比べて2.6倍のエネルギーを備えているという。これらの波動がどこで生じるのかについては、複数の仮説がある。磁力線の再配置時に高周波リップルが放出される場合、あるいはスピキュール(太陽大気のジェット)が直接波動をプリューム上部へ送り込む場合、さらには大きく遅い波が互いに衝突して「乱流カスケード」と呼ばれる小さな高周波波の集団を生み出す場合が考えられている。

これらの波動エネルギーは共鳴吸収と位相混合といった過程を経て、太陽外層のプラズマに伝わると推定されている。外層の温度は100万度を超える異常な高さに達するが、その熱源の一部がこの波動エネルギーである可能性が指摘される。また別の一部は、高速太陽風の粒子を秒速数百キロメートルまで加速するプロセスに寄与しているとみられる。

ただし、今回の単一データセットから計算されたエネルギー総量は、太陽風を完全に説明するのに必要とされる理論的予測値よりもなお1桁程度低い。それでも、現在の観測技術が見落としてきた膨大なエネルギーが太陽極域に潜在することが初めて示された意義は大きい。2029年初頭の打ち上げが予定されている Solar Polar-orbit Observatory(太陽極軌道観測衛星、SPO)は、独特の観測角度から太陽極域の磁気環境を前例のない精度でとらえ、さらに高速な波動をも記録できる可能性を秘めている。

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出典: Universe Today