太陽は「スーパーフレア」を起こせるか――歴史データが示す衝撃の可能性
太陽は予想以上に危険な星かもしれない。マックス・プランク太陽系研究所のナタリー・クリボバ氏らの研究チームが、学術誌『フィロソフィカル・トランザクションズ・エー』に発表した新しい論文は、これまで定説とされてきた太陽の「おとなしさ」を根底から揺さぶっている。同じようなタイプの恒星がしばしば起こす劇的なエネルギー放出「スーパーフレア」について、太陽もまた物理的には起こす能力を持っているという結論だ。
活動領域の大きさとフレアエネルギーの指数関係
クリボバ氏のチームは、2010年から2016年にかけてNASAの太陽動力学観測衛星(Solar Dynamics Observatory)が集めたデータを分析した。焦点となったのは、太陽の「活動領域」(Active Regions)と呼ばれる磁場の異常な領域だ。これらの領域がねじれた磁場を放出する際、解放されるエネルギーは視認できる「フレアリボン」と呼ばれる発光現象を伴う。
研究チームが見出した関係式は直感的かつ重要だった。活動領域の面積が大きいほど、フレアリボンの面積も大きく、そして放出されるエネルギーも増加する。特に注目すべき点は、フレアエネルギーがリボン面積に対して指数関数的にスケールするということだ。この統計的相関は計算上よく成立し、実データとも合致した。
歴史上最大の太陽嵐から未来を計算する
これまで記録に残る太陽嵐の中で最も有名なのは、1859年のキャリントンイベント(Carrington Event)である。この太陽嵐はカリブ海の人々がオーロラの光で夜間に新聞を読めるほどの明るさをもたらした一方、電信塔や電信局に自発的な発火をもたらすほど危険だった。クリボバ氏らの計算によれば、この事象を引き起こした太陽黒点は最大で10^33エルグ(太陽嵐強度の単位)のエネルギー放出能力を持っていた。スーパーフレアの水準には達していないが、他の要因に基づいた現代的な推定値とほぼ一致している。
しかし、歴史上最大の太陽黒点はキャリントンイベントの原因となったものではない。1947年の「大黒点」(Great Sunspot)がその記録を保有している。この黒点の面積はキャリントンイベントの活動領域の2倍以上だった。研究チームの公式に当てはめると、10^34エルグを超える理論的エネルギー放出能力へと跨ぎ、スーパーフレア領域に到達する。大黒点自体がそこまでのエネルギーを実際に放出したわけではないが、その可能性を持っていたということだ。つまり、少なくとも理論上は太陽も銀河系内の類似星と同程度のフレアを起こせる能力があるということになる。
確率は低いが、100年に一度は起こり得る
ただし、この結論にはいくつかの限定条件がある。黒点がその規模にまで成長したからといって、必ず危険なフレアが発生するわけではない。1947年の大黒点がそれを物語っている。また、こうした規模の黒点が形成されるには複雑な物理条件の一致が必要であり、それは比較的稀だ。
それでも天文学者の計算では、こうしたイベントは約100年に一度は起こるとされている。もしそれが地球に向かって発生した場合、コロナ質量放出(Coronal Mass Ejection)を伴うフレアは惑星全域の電力網を破壊し、修復には数ヶ月を要する可能性がある。現在、人類はこうした事態への準備が不十分だ。
太陽は地球のほぼすべての生命にとって不可欠な星である一方で、適切な条件下では同時に極めて危険な存在でもある。その二面性は、やがてやってくるかもしれない脅威への警告として機能している。
出典: Universe Today
