宇宙最古の超大質量ブラックホール誕生環境を解明へ 国際研究チームが形成条件を特定

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が初期宇宙を観測した際、天文学者たちは予想外の光景を目にした。ビッグバンから10億年以内に相当する高い赤方偏移(z値)で、超大質量ブラックホール(SMBH)の「種」と見られるものを多数の銀河が宿していたのだ。この発見は既存のブラックホール形成モデルに疑問を投げかけた。従来説では星が寿命を迎えて崩壊し、それらが次々と合体することで超大質量ブラックホールが形成されると考えられていたが、宇宙初期にこれほど巨大なブラックホールが存在することはこの理論では説明がつかない。そこで注目されたのが「直接崩壊ブラックホール(DCBH)シナリオ」である。この仮説では、初期宇宙の銀河中心に冷たいガスの巨大な雲が集結し、それが直接崩壊して黒い穴を形成するとされている。

ダークマター合体と宇宙密度の過剰領域が形成を促進

これらのブラックホール種がどのような環境で生まれたのか、その謎に迫った国際的な研究チームがある。エディンバラ大学天文学研究所・ロイヤル天文台のアレッサンドロ・トリンカ博士らは、ダークマター(DM)の合体とガス・塵・星が異常に密集した「宇宙密度過剰領域」が、超大質量ブラックホール種の形成に適した環境だと結論づけた。研究成果は学術誌『英国王立天文学会月報』(MNRAS)に掲載された。

トリンカ氏らのチームは、高解像度N体シミュレーションを用いてダークマターハロー(DM halo)の合体履歴を再現し、ブラックホール形成と銀河共進化の半解析的モデルと組み合わせた。計算には粒子ベースコード「GIZMO」に基づいた宇宙ズーム・イン・ソフトウェアを使用。その後、「宇宙考古学ツール(CAT)」という半解析モデルを用いて、各種のハロー前駆体における目に見える物質(バリオン)成分をシミュレートした。CATは高い赤方偏移を示す天体の性質を解釈し、異なるブラックホール進化シナリオを観測と照らし合わせるために開発されたツールである。

今から13.64億年前に形成開始、金属汚染で終焉

シミュレーション結果は、直接崩壊によるブラックホール種が最初に形成されたのがビッグバンからわずか13.64億年前(500万年以内)だったと示唆している。この過程は約13.5~13.4億年前まで続いたと見られる。その後、最初の世代の星(Population III星)が超新星爆発を起こし、その爆発で放出された金属が銀河間物質(IGM)を汚染することで、直接崩壊型のブラックホール形成が抑制されるようになったという。

研究チームは、今後のJWST観測キャンペーンで、高赤方偏移クェーサー周辺に大量のクェーサー伴銀河活動核(AGN)候補が検出されれば、それが早期の超大質量ブラックホール形成が高度に密集した過密環境を好むことの強い証拠になると指摘している。本研究で予測された観測可能なシステムの数は、今後の観測調査における具体的なベンチマークとして機能することが期待されている。

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出典: Universe Today