パルサー・タイミング・アレイが暗黒物質星の痕跡を探る

宇宙初期の超大質量ブラックホール形成の謎を解く新たな手がかりが、重力波観測から浮かび上がってきた。NANOGrav計画が67個のパルサーを15年間にわたって観測した結果、予想外の重力波信号が検出されたのだ。この信号は、宇宙初期に存在した可能性のある謎の天体の存在を示唆している。

時計のような精度で宇宙を読む

パルサーは極めて正確な宇宙の時計である。この精密さゆえに、ドップラー効果によってパルサーの位置のわずかな変化を測定できる。パルサー・タイミング・アレイ(PTA)という手法は、多数のパルサーを長期間観測し、それらのタイミングのずれを統計的に分析することで、宇宙規模の重力波を研究するものだ。

NANOGrav計画はこの手法を用いて、宇宙初期の急速な膨張(インフレーション)の証拠を発見することを期待していた。ビッグバン直後の宇宙の急速なインフレーションは、宇宙マイクロ波背景放射と同様に、宇宙全体に特有の背景重力波を満たしたはずとされていた。しかし観測された重力波は主に超大質量ブラックホールが生成したものに支配されており、インフレーション由来の信号は検出限界以下に隠れている可能性が高まった。

宇宙初期の謎の巨大天体

新しい研究では、検出された重力波信号が何を示唆しているかに焦点を当てた。近年、我々は予想より遥かに早い時期に超大質量ブラックホールが存在していたことを発見している。こうした天体がなぜこれほど急速に形成されたのか、その謎を解く仮説として、複数の候補が検討されている。

一つ目は直接崩壊ブラックホール(DCBH)である。大質量星の残骸からではなく、水素とヘリウムの巨大な雲が直接崩壊して形成されるもので、最初の星が出現した時期と同じころに生成されたと考えられる。宇宙初期の密集した領域では、こうしたブラックホールが急速に超大質量へと成長する条件が揃っていた。

二つ目はより推測的な超大質量暗黒物質星(SMDS)というモデルである。暗黒物質と通常物質が巨大な高密度雲へと崩壊し、核融合ではなく暗黒物質の崩壊によって光と熱を放つ天体だ。太陽の100万倍以上の質量を持ち、青色巨星のように輝いた後、超大質量ブラックホールへと崩壊したと想定される。

GhodlaとIlieの研究では、これら二つのモデルそれぞれが生み出す重力波の種類と強度を分析した。その結果、観測された重力波信号は、直接崩壊ブラックホールの個数に上限を示唆していることが判明した。もし1立方メガパーセク当たりのDCBHが1個を超えれば、観測値より強い重力波信号が生じるはずだが、実際のDCBHは推定で100万立方メガパーセク当たり1個程度と極めて稀であり、観測限界をはるかに下回っている。

これに対して超大質量暗黒物質星は全く異なる状況を呈する。宇宙全体で暗黒物質が通常物質を圧倒的に上回る存在であるなら、超大質量暗黒物質星がかつて豊富に存在したとすれば、その生成する重力波が現在観測されている背景信号の主要な源となり得るのである。この結果が超大質量暗黒物質星の実在を証明するわけではないが、その存在の可能性を示している。

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出典: Universe Today