宇宙初期の謎に挑む超高解像度シミュレーション「ASTRID」、現在までの進化過程を完全再現
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が宇宙初期の銀河とブラックホールを観測した際、予想外の発見が相次いだ。初期宇宙に存在するはずの銀河とブラックホールが、宇宙論的に考えられるより成熟した状態で見つかったのだ。このパズルを解くために、世界最高速のスーパーコンピュータを用いた大規模なシミュレーションが活躍している。その一つが新しい宇宙論的シミュレーション「ASTRID」だ。
カーネギーメロン大学物理学部の博士課程学生であるYihao Zhouが筆頭著者となり、ASTRIDの最新成果が天体物理学誌『The Astrophysical Journal』に掲載された。論文のタイトルは「The ASTRID Simulation at z = 0: From Massive Black Holes to Large-scale Structure」だ。
最高の解像度で再現された宇宙の歴史
ASTRIDは約3300億個の粒子を含み、1辺が370メガパーセク(Mpc)のシミュレーション領域を持つ最大級の宇宙流体力学シミュレーションの一つだ。研究チームは赤方偏移z=99、つまり宇宙の暁明期(Cosmic Dawn)から現在(z=0)までの全進化過程を追跡した。赤方偏移は、宇宙の膨張に伴う光の伸張度を示す指標である。z=0は現在を、z=無限大はビッグバンを意味する。
規模の面では、同じ種類のシミュレーション「MillenniumTNG」の方が1辺740Mpcと約2倍広い領域をカバーしている。だがASTRIDは粒子数がはるかに多く、より高い解像度を実現している。さらに広い質量範囲にわたる大規模なブラックホール集団を搭載していることが特徴だ。質量が4×10の4乗から2×10の11乗太陽質量に及ぶブラックホールが含まれている。
JWSTの謎に答える物理的リアリズム
カーネギーメロン大学マックウィリアムズ宇宙論・天体物理学センターの所長で、本研究の共著者かつASTRIDの主任研究者であるTiziana Di Matteoは、このシミュレーションの意義を述べている。「初期時代の形成から今日まで、ブラックホールと銀河の成長を追跡できる極めて大規模で高解像度、かつ物理的リアリズムに優れたシミュレーション領域を保有している」と指摘する。
Yihao Zhou自身も、研究成果が科学コミュニティに提供されることの重要性を強調している。高い解像度と物理的な現実性を兼ね備えたASTRIDのデータを用いることで、JWST観測から浮上している現在の謎の一部を解明し、予測を立てることが可能になるとされている。
出典: Universe Today
