宇宙の謎に迫る発見 超大質量ブラックホールの前駆体が合併寸前
東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構の大学院生・田中拓海氏率いる研究チームが、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)で発見された「小さな赤い点」(LRD)の双子ペアを検出し、それが超大質量ブラックホール(SMBH)の形成過程を示唆する可能性があることを明らかにした。この成果は『天文学会刊行物』(Publications of the Astronomical Society of Japan)に発表され、宇宙初期のブラックホール成長の謎を解く手がかりとなっている。
300以上の「赤い点」が語る、ブラックホールの幼少期
JWSTが観測した「小さな赤い点」は現在までに300個以上発見されており、いずれも宇宙誕生から6億年から16億年後の時代に存在していたと考えられている。これらはブラックホール、特に現在の宇宙で大質量銀河が中心に抱える超大質量ブラックホールの初期段階である可能性が高い。
銀河系中心のブラックホール・射手座A*は400万太陽質量以上を持つが、このような巨大な質量がどのようにして形成されたのかは長年の謎であった。JWSTの主要な科学目標の一つは、こうした初期宇宙の観測を通じて、超大質量ブラックホールがなぜこれほど巨大になるのかを解き明かすことにある。
極めて接近した二つの「赤い点」が示唆する衝突
田中氏のチームは、COSMOS-Webサーベイのデータから、極めて接近した「小さな赤い点」のペアを4組発見した。これらは分光観測で赤方偏移z=5.822とz=5.464を示し、投影距離はそれぞれ約1.64キロパーセク(約5,300光年)と7.36キロパーセク(約24,000光年)と推定された。
参考として、銀河系の可視部分の全幅は約100,000光年である。このような近距離に二つのブラックホールが存在することは、単なる偶然の重なりではないと研究チームは指摘する。既存のサンプルとモックデータの比較から、異なる赤方偏移を持つ天体が偶然この配置を示す確率は極めて低いことが確認された。
ピクセル単位での色選別という新たな手法を用いることで、単一の天体に見える場合でも、実は二つの「赤い点」が隣接している可能性を識別できた。この発見は、超大質量ブラックホールの形成に合併が重要な役割を果たしていることを強く示唆している。
出典: Universe Today
