早期宇宙の謎の赤い天体は「ブラックホール星」か——JWST観測から新説

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が捉えた「Little Red Dots」(赤い小さな天体)は、濃密なガスに包まれたブラックホール「ブラックホール星」である可能性が指摘されている。ハワイ大学天文学研究所のロハン・ナイドゥ助教授を筆頭とする研究チームが、Nature誌に「A gas-enshrouded and gas-reddened black hole at cosmic dawn」と題する論文で提案した。この仮説が正しければ、初期宇宙で観測されている質量の大きな超大質量ブラックホール(SMBH)の形成過程を説明できると考えられている。

ビッグバンから6億〜16億年の謎の天体

Little Red Dotsは、ビッグバンから約6億年から16億年後の初期宇宙に存在していた小さな赤い天体で、これまでに約300個が発見されている。その特異な性質は既存の理論では説明しきれず、初期宇宙における銀河と超大質量ブラックホールの形成メカニズムに関する理解を揺さぶっていた。

研究チームによれば、これらの天体は通常の降着円盤だけでなく、周囲を濃密なガスの繭に包まれたブラックホールであるという。このガスの厚い層が光を赤くする効果を生み出している。従来、研究者らはLittle Red Dotsについて、初期活動銀河核(AGN)に内在する超大質量ブラックホール、低金属量のPopulation III星、または未知の星の種族である可能性を提唱していた。しかし、これらのいずれの仮説でも観測結果と矛盾が生じていた。

「宇宙の夜明け」における巨大ブラックホール問題

JWSTはもう一つの難題を浮かび上がらせていた。初期宇宙で発見された超大質量ブラックホールが、予想をはるかに上回る質量を持っていたのだ。現在の宇宙では、超大質量ブラックホールが占める質量は銀河全体の約0.1〜0.5%程度。ところがJWSTの観測では、この比率が10〜30%に達するものが見つかっている。ナイドゥ助教授は「何か壮大な現象が初期宇宙で起こったに違いない」とコメントしている。

オーストリア科学技術研究所のジョリット・マテー研究員(論文の共著者)は、このジレンマについて「ビッグバン後700百万年以内に10億太陽質量を持つクエーサーが存在することは、長年『問題のあるクエーサー』と呼ばれてきた」と述べている。ブラックホール星という新仮説は、これら初期の巨大天体の急速な成長メカニズムを説明する鍵となる可能性がある。

最も赤い天体の正体

今回の研究は、「MoM-BH*-1」という特定の天体の詳しい観測に基づいている。この天体はJWSTの超深視場観測(Ultra Deep Survey)で、観測領域内で最も赤い天体として記録されたため、「Mirage or Miracle」(蜃気楼か奇跡か)と名づけられた観測プログラムで、より詳細な観測が行われた。

研究チームは、ビッグバン後6億6千万年の時点に存在するこの天体が、これまでのどの赤方偏移でも報告されていない最大級の水素バルマー断裂、多重ピークを持つHβ発光、複数の遷移におけるバルマー線吸収といった特異なスペクトル特性を示していることを確認した。こうしたスペクトル信号が、ガスに包まれたブラックホール仮説を直接支持する証拠になると論文は主張している。

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出典: Universe Today