超大質量ブラックホールのジェットが銀河進化を支配する仕組み
ブラックホールは銀河の中心に潜む小さな存在だ。しかし最新の観測が示すのは、その驚くほど広大な影響力である。アリゾナ州立大学とインド・ラマン研究所の研究チームが数百個の活動的なジェットを持つ銀河を調べた結果、ブラックホールから放出されるジェットが銀河全体の進化を劇的に変えることが明らかになった。
研究は暗黒エネルギー分光探査機(DESI)を搭載したキットピーク山頂の4メートルメイヨール望遠鏡と、ヨーロッパに設置されたLOFAR Two-meter Sky Survey(LoTSS)という低周波ラジオアレイを組み合わせて行われた。ジェット軸に沿ったイオン化水素(水素アルファ線)の特性的なシグナルを検出した結果、ジェットは進路上のガスを「加熱」していることが明らかになったのだ。
銀河を取り囲むガスの領域が鍵
多くの銀河、そして銀河系を含む天の川銀河さえも、周囲に膨大な量のガスのエンベロープに包まれている。この領域は周銀河中間領域(CGM)と呼ばれ、時には銀河の可視部分の10~20倍にも達する巨大さを持つ。CGMはバリオン貯蔵庫と呼ばれる目に見える物質の集合で、長期的な銀河進化に貢献し、それを調整する。ここに蓄積されたガスは重力によって凝集しながら銀河に流れ込み、新しい星の誕生に必要な材料として機能する。
研究結果が示したのは、ブラックホールのジェットがこのCGMと接触する場所、そしてジェットが宇宙空間を伝播しながら超高エネルギーを放出する領域において、ショック波面とエネルギー解放が起きるということだ。この現象は二つの相反する結果をもたらす。ジェットが衝撃を受けたガス領域に達すると、星形成の波が生じることがある。一方、ジェットがガス供給を破壊する場所では星の誕生が「クエンチ」される。
小さな存在が途方もなく大きな影響を持つ理由
ラマン研究所のナムラタ・ロイ研究員は「驚くべき問いは、こんなに小さなものがこんなに巨大なものに影響を及ぼせるのかということだ」と述べている。ブラックホールから放出されるジェットは、相対論的ジェット(relativistic jets)と呼ばれ、ブラックホール近傍で過熱された物質が対となって高速で外側に放出される現象である。ジェットは全波長域で放射を生成するため、無線、X線など複数の手段で観測できる。
ブラックホールと活動的なジェットを持つ銀河は活動銀河核(AGN)と分類される。その影響範囲は途方もなく広い。ブラックホールは銀河に比べて信じられないほど小さいものの、その影響は数十万光年先、銀河の最外部にまで到達する。ジェットが外側にエネルギーを運び、その経路に沿ってガスが光り輝くのだ。
ジェットの作用――ガス雲の加熱、かき混ぜ、衝撃、撹乱――は銀河の成長に対して加速あるいは制動として機能する。ブラックホールが近傍のガス供給を消費し尽くしたり、そのジェットが遠方の銀河内のガスを破壊したりすれば、銀河の成長速度は根本的な影響を受ける。最悪のシナリオでは、ブラックホールとジェットの活動によって銀河は静止状態に陥り、星をほとんど形成しなくなってしまう。
出典: Universe Today