宇宙核利用、急速な進展の陰で深刻な課題が浮上
2028年末までにNASAが核電気推進システムを打ち上げる「スペース・リアクター1・フリーダム」プロジェクト、月面用の核電源システムを開発する「ルナー・リアクター1」計画など、宇宙開発における核利用技術が加速しつつある。2026年8月13日にワシントンで開催された宇宙核産業シンポジウムで、ホワイトハウス科学技術政策局の戦略的能力調整官アーロン・マイルズ氏は「これは世代を代表する機会かもしれない」と述べ、政府と民間企業の取り組みが進展していることを強調した。しかし繁栄の時期は課題なしでは成り立たない。
核燃料と部品供給の二重の危機
4月に発表された政府の宇宙核政策は、エネルギー省に対し60日以内に、向こう5年間で宇宙核利用に向けた最大4基の原子炉を製造できる体制の整備状況を評価するよう指示した。マイルズ氏は「米国には確実に能力がある」と述べた一方で、深刻なリスクを指摘している。
その最たるものが、セラミック高純度低濃縮ウラン(HALEU)燃料の製造ラインが存在しないという現状だ。宇宙核原子炉の主要なエネルギー源となると見込まれるHALEUは、小型モジュール炉などの陸上用原子炉でも需要が増加している。現在、国内でHALEU を供給する唯一の企業はエネルギー省である。同省は7月23日、宇宙・ロケット1ミッション用としてNASAにこの燃料の一部を提供することを発表した。また民間企業のラディアント社を含む複数の原子炉企業にもHALEUを配分している。
NASAの高度核技術オフィス部門マネージャーであるジェレミー・ケニー氏は「HALEU の利用可能性とサプライチェーン面で慎重である必要があり、それが優先順位付けと利用可能性の観点でボトルネックになる可能性がある」と懸念を表明した。原子炉部品のサプライチェーン、核とスペースの両分野に精通した限定的な人材、そして地上試験施設へのアクセス制限も課題として挙げられている。
軍事用途との資源競合が加速
米陸軍の「ジェイナス」計画は基地に電力を供給するマイクロ原子炉の開発を目指しており、陸軍施設・エネルギー・環境担当副次官補ジェフ・ワークスマン氏によれば、5社の選定を間近に控えている。ジェイナス計画は宇宙核利用に焦点を当てるものではないが、先端的核利用の「先駆け」と位置付けられている。陸軍はNASAと技術面での協力を進めており、こうした高度なシステムの限定的な専門知識を共有している。
ワークスマン氏は「これらすべてのプログラムが一緒に成功する必要がある」と述べた上で、「今は互いに足を引っ張っている場合ではない。陸上でも宇宙でも原子炉を建設して成功させねばならない」と強調した。
政権交代後の継続性に懸念
シンポジウムでは、現政権以降の宇宙核プログラムの継続性を懸念する声も上がった。元NASA技術・政策・戦略担当副長官で、2025年に宇宙核計画の長く困難な歴史を調査した報告書の共著者であるバヴィア・ラル氏は「3年後に宇宙核計画が存続しているかが気がかりだ」と述べた。現在の宇宙核計画への支援は強固に見えるが、ラル氏はそれを「位置的であり、構造的ではない。人物に結びついており、書類ではない」と評価している。つまり2029年1月には状況が変わる可能性があるということだ。
スペース・リアクター1は明確な利用者を持たないプログラムであり、火星ヘリコプター「スカイフォール」という技術実証ペイロードを搭載しているが、これは別のミッションで運用することも可能だという。宇宙核産業の短期的な課題が急速に解消される一方で、長期的な制度設計の脆弱さが、スペース・リアクター1が直面する最大の障害として浮かび上がっている。
出典: SpaceNews
