ブラックホールのジェットが銀河外縁部の物質を加熱、星形成を抑制する仕組みが判明
銀河中心の超大質量ブラックホールから放出されるジェットが、銀河から遠く離れた外縁部の物質にも影響を及ぼし、そこでの星形成を阻害していることが新たな観測で明らかになった。天文学雑誌『The Astrophysical Journal Letters』に掲載された研究によるもので、これまで考えられていたよりも、ブラックホールが銀河進化全体に及ぼす影響は想像以上に広大であることが示唆される。
銀河外縁部に届くジェットの加熱作用
超大質量ブラックホールは数百万から数十億の太陽質量を持つ巨大な天体だ。その大きさは恒星系程度に限定されているのに対し、その居宅となる銀河は10万光年以上に及び、1000億太陽質量を超える場合も珍しくない。こうした局所的な「エンジン」がなぜ銀河全体の進化に影響を与えるのか、これが研究者たちの長年の疑問だった。
活動銀河のジェットの周辺を観測する際、研究チームはダーク・エネルギー分光測定器(DESI)サーベイとLOFAR二メートル・スカイ・サーベイ(LoTSS)のデータを活用した。数百個の活発なジェットを持つ銀河の周辺でH-alpha領域(電離水素による発光領域)を調べたところ、ジェットの周辺に限らず、より遠方の領域も光子によって電離されていることが判明したのだ。つまり、ジェットによる加熱範囲は従来の予測より広いということになる。
マグネシウムの吸収線分析により、銀河周辺媒質(CGM)の温度構造も調査された。ジェットが銀河周辺媒質全体の加熱を実質的に駆動していることが確認できたのである。
星形成への間接的な抑制メカニズム
銀河は周囲のガスによって包まれており、この銀河周辺媒質(CGM)は時間とともに冷却して銀河内部に落ち込み、新しい星形成の源となるはずだった。しかし観測では、その多くが銀河の外縁部にとどまり続けている。その理由として、ブラックホールのジェット活動が銀河周辺媒質を加熱し、内側への落下を妨げていることが今回の研究で示された。
ジェットが銀河周辺媒質に熱を供給することで、銀河内部に流入する物質の量が減少する。この現象は銀河の星形成効率を低下させる。超大質量ブラックホールは星を引き裂き飲み込む破壊者である一方で、遠く離れた場所で次の世代の恒星が生まれることまで防いでいるという、ブラックホールの二面的な役割が明らかになった。
出典: Universe Today
