太陽だけでなく、他の恒星でも「縁暗化」現象が直接観測される時代に
CHARA Array(高角度分解能天文学センター)が近傍の31個の恒星で縁暗化(limb darkening)現象を直接観測することに成功した。この成果は『The Astronomical Journal』に掲載され、恒星大気の研究方法に新たな道を開くことになった。
縁暗化とは、恒星の中心部が縁よりも明るく見える現象である。太陽で観察される場合、中心から光を見ると太陽大気をほぼ直進してくるため吸収や散乱が少ないが、縁から見える光は大気を浅い角度で通過するため、散乱や吸収が増える。結果として縁が暗く見えるという仕組みだ。この効果は18世紀にピエール・ブーゲによって太陽で初めて測定されている。
現在では、太陽大気の厚さや密度、温度の変化を理解するうえで重要な観測対象となっており、原理的には他の恒星についても同じ現象を利用して大気構造を調べることが可能である。しかし実際には、ベテルギウスなどの大型恒星でのみ直接観測されてきた。系外惑星の通過時の光度曲線から他の恒星の縁暗化を推定する方法も存在するが、難度が高く進展は限定的だった。
近赤外線での波長依存性が予想外
CHARA Arrayの研究チームは、今回31個の近傍恒星に対し、太陽をモデルにした観測方法を適用した。縁暗化を直接測定するため、中心から縁へ向かう一本の線に沿った恒星の明るさをプロファイリングしたのである。従来の可視光ではなく、波長1.6マイクロメートルと2.2マイクロメートルの近赤外線二波長を用いることで、波長依存性を比較することが可能になった。
予測通り、より長い波長である2.2マイクロメートルでの縁暗化は、1.6マイクロメートルより小さかった。波長が長いほど大気による散乱と吸収が減少するためである。夕焼けが赤く見える原理と同じ現象が、恒星大気でも起きているわけだ。
しかし意外な結果も浮かび上がった。2.2マイクロメートルでの明るさが1.6マイクロメートルより約38パーセント弱かったのに対し、恒星大気モデルが予測していたのはおよそ20パーセント程度の差だったのである。
現在の恒星大気理論に修正が必要
この38パーセントと20パーセントの乖離は、恒星大気に対する理解がまだ完全でないことを示唆している。今後、可視光や複数の赤外線波長での観測が追加されれば、恒星大気の性質がより詳しく明らかになるだろう。
数百年間にわたって太陽に限定されていた縁暗化の観測が、今や他の多くの恒星にまで拡張された意義は大きい。これまで太陽からのみ学べた現象を、様々な恒星で調べることで、恒星大気の普遍的な性質と個性的な特性の区別が可能になる。CHARA Arrayのような高い角度分解能を持つ装置の発展が、恒星物理学の新しい観測時代を切り開いた。
出典: Universe Today
