ロケット打ち上げの揺れを制御する新型アダプター、スイスの研究チームが開発
ロケット打ち上げは人類が生み出した最も過酷な移動手段の一つだ。数百万ポンドの推力が発生し、衛星に激しいG力が加わる。人間の宇宙飛行士は厳密な訓練でこれに耐える必要があるが、機械も設計段階で同様の対策を施さねばならない。デリケートなミラーや半田接合部が割れてしまえば、数十億ドル規模の衛星開発に費やした年単位の努力が水の泡になってしまう。
スイスの研究チームがこうした問題に対する革新的な解決策を打ち出した。衛星はロケットのフェアリング内に単に置かれるのではなく、ペイロードアダプターと呼ばれるインターフェースに直結される。従来のアダプターは堅固な機械的マウントで設計され、飛行中に衛星が動かないようになっている。しかし剛性が高いがゆえに、特に衛星を上下方向に揺さぶる縦方向振動の伝達に優れている。こうした応力こそが、鏡やセンサーの破損を招く要因となる。
フォノニック結晶が振動を回転運動に変換
スイス連邦材料工学技術研究所(Empa)と航空宇宙サプライヤーのBeyond Gravityの研究チームは、この問題に対してフォノニック結晶という全く異なる技術を採用した。これはメタマテリアルの一種で、機械波を制御・屈曲・遮断するよう意図的に設計されている。光子結晶が光を操作するのと同じ原理だ。
プロトタイプは鋭い縦方向の衝撃を回転運動に転換し、その運動エネルギーをロケット本体の振動からアルミニウムリング群の可動部へ直接転移させる。エネルギーが大幅に吸収されることで、衝撃は減衰し、衛星の内部システムにかかるストレスが軽減される。
開発段階はまだTRL4~5、実用化には時間が必要
衛星は従来、ロケット打ち上げの極限環境に耐えるよう設計されている。そのため構造補強の要件を低減できる技術は、ペイロード容量の余裕を生み出し、打ち上げコストの削減か衛星本体のより有用なペイロード増加につながる。さらに従来では破壊されてしまう薄型光学素子や量子コンピューター用の敏感なセンサーなど、より繊細な機器の搭載も可能になる。
Beyond Gravityはこのシステムに対して特許出願を行っており、現在はコンピューターシミュレーションとベンチテストでの応力試験に合格している。だがこれはNASAの技術成熟度レベル(TRL)スケールで4~5段階に過ぎない。フォノニック結晶ペイロードアダプターが主流採用されるまでには、さらなる開発段階を経る必要があろう。ただ従来の機械系システムと比べた利点は明白であり、開発上の大きな障害がなければ、衛星が遥かにスムーズで軽量化された状態で宇宙へ向かう日はそう遠くないとみられる。
出典: Universe Today
