隕石に秘められた「有機分子の多様性」——AFMで初めて撮影に成功

隕石に含まれる有機物の正体が、従来の予想より遥かに複雑だったことが判明した。Joseph W. Frye-Jones(フロリダ州立大学・全米高磁場研究所)の研究チームが『The Planetary Science Journal』に発表した論文によると、世界で最も有名な隕石の2つから、これまで未発見だった数万種類の有機化合物が検出されたのだ。

科学者たちは長年、隕石がアミノ酸や簡単な糖類、さらにはDNAの化学的な構成要素といった「生命の構成要素」を含んでいることを認識していた。しかし従来の分析方法は限定的だった。研究チームは粉砕した隕石サンプルを水や酸で洗浄し、グリシンやウラシルなど馴染みのある有機物のみを探索するアプローチをとっていたのだ。その結果、「可溶性有機物」(SOM)として知られる膨大な種類の有機化合物は見落とされてきた。

4つの溶媒と世界最強級の分析機器

Frye-Jonesチームは異なる戦略を採用した。1969年にオーストラリアに落下したマーチソン隕石と、2019年にコスタリカに落下したアグアス・サルカス隕石から採取したサンプルを、メタノール、エタノール、クロロホルム、トルエン(マーチソン隕石にはアセトンも追加)という4つの溶媒で段階的に処理したのだ。極性が異なる溶媒を使い分けることで、より多くの化合物を選別できる。その結果、窒素と酸素を含む開鎖有機物と、芳香環を持つ油性有機物の両方が抽出された。

これらの溶液に対して2つの強力な分析機器が使われた。1つは全米高磁場研究所(タラハシー)に設置された21テスラ・質量分析計で、世界で最も強力な超伝導質量分析計だ。その精度は単一電子の質量未満という驚異的レベルにある。もう1つはブルックヘブン国立研究所(ロングアイランド)のAFM(原子間力顕微鏡)で、分子の構造をそのまま撮影できる特性を持つ。

AFM担当の研究者Percy Zahlは、銅結晶の上に抽出液を堆積させたうえで、一酸化炭素分子をAFMの先端に取り付け、有機物の環を滑らせながら一酸化炭素分子が受ける反発力を測定することで分子をなぞった。質量分析計は化合物の成分を示し、AFMはその構造を視覚化したのである。

予想を超えた分子の多様性と複雑性

その結果は驚くべきものだった。マーチソン隕石から66,000種類以上、アグアス・サルカス隕石から91,000種類以上の分子式が見つかったのだ。分子の質量は1,000原子質量単位まで広がり、炭素原子数は10から70、酸素原子は最大20個含まれていた。

興味深いことに、異なる溶媒で抽出された分子タイプの重複は非常に少なかった。マーチソン隕石のメタノール抽出液とトルエン抽出液の間で共有される分子式は1%未満だったほどだ。

さらに注目すべき発見として、有機金属化合物の存在が挙げられる。質量分析計は35個以上の炭素原子を含む鉄ベアリング有機分子を多数検出した。これらは安定した有機金属化合物で、強く酸化されたものもあり、マグネシウムも含まれていた。同じカテゴリーの小惑星由来でありながら、アグアス・サルカス隕石はマーチソン隕石に比べてマグネシウムを含む有機金属式がはるかに少なかったのである。

本研究の最大の示唆は、隕石が純粋なアミノ酸を直接地球にもたらしたのではなく、むしろ石油採掘地帯のような「ペトロケミカル貯蔵庫」として機能していたということだ。隕石は数十万の有機物を搭載していたのである。

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出典: Universe Today